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「キラーちゃんが曲がり角に出ないで変な動作をして、振り下ろす時に出れば良いんじゃない?」
いくみさん……
変な動作って……
でも、考えられる行動の中では最適だと僕も思う。
他に考えも浮かばないのだが……
「じゃ、キラー君!しっかりね!!」
彩希の珍しく優しい掛け声に、僕は警戒しながら……
いつも通りに素振りの動きからの……
曲がり角に向かい鉄パイプを振り下ろす!!!
「あー!!!」
僕は今……この地下迷宮に入ってから一番大きな声が出た。
慌てて元の場所に戻ったのだが……
「ちょっと待って!!パッと出て当たるもんじゃないよ!!」
そう…
僕は曲がり角から出た時にだいたいの場所を定めて火を放ったのだが、その瞬間に触角が襲いかかって来たのを確認出来た為に引き下がった。
勿論、火は当たっていないと思う。
簡単に一瞬しか見ていないのだが、カタツムリの姿を説明すると、体長は恐らく2メートル50センチはあると思う。
甲羅?殻?は、苔みたいのが沢山付いていて深緑と言えば分かりやすいのか…
姿は完全にカタツムリだった…
羽角がナメクジと間違えたのが逆に不思議…
「カタツムリとナメクジって違うんですか?殻とか拾って付けるんですよね?ナメクジが……」
羽角……
あ〜
彼はヤドカリみたいのと勘違いしてるんだ…
「えっ!?カタツムリって自分で殻を大きくさせてるんですか?知らなかった…」
羽角君、分かって良かったね…
こんな大変な時に………
「ついでに、キラーちゃん……ここのカタツムリは肉食みたいだから、食べられない様に気をつけてね!」
いくみさん?
なんか物凄い物騒な事を言ってますけど……
「キラー殿、そのカタツムリですが……曲がり角を此方に向いたら我々の全滅の可能性がありますよ…早く倒さないと……」
ミアータの言葉に僕も今更気が付いた。
曲がり角を向こう側から左側に曲がれば僕達が居る訳で、そこで触角が伸びてきたら……
「ハカセ!!盾を構えて一緒に行くよ!!」
僕はハカセに準備させて、先程同様に火の魔法の段取りをした。
「キラー!僕にはちょっと無理かも知れないからね!自信無いなぁ……」
ハカセの言葉に、
「ハカセさん!!やる前に無理とか言わないで下さい!!貴方が頼りなのです!!そんなに駄目な人ならアタシがハカセさんの盾で、キラーさんを守ります!!」
小春がハカセに本気で怒っている。
「ハカセさん…僕と小春は仲間の死を見せられて、このメンバーに入れてもらえたのです。ですから戦闘には本気で倒しに向かわないといけないのを知っています。小春がハカセさんに強い口調で言ってしまったのは僕からも謝ります……」
羽角が言っている途中で、
「謝る必要は無いでしょ?当たり前なんだから!!ハカセ……どうなのよ?」
彩希が鋭い目つきでハカセを睨んだ。
こんなにメンバー間での殺伐とした雰囲気は初めてである……