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先程の羽角が開けた扉から少し真っ直ぐ歩き…
「ホラっ!ここは右にしか行けないみたいよ…何か居たら危ないね…」
彩希が言いながら、軽くハカセの肩を叩いた。
「ハカセ!!彩希からご指名よ!早く前に行って!!」
いくみが半分笑いながら言っているのだが、実際初めての場所での曲がり道は怖い。
「僕を指名してくれて、嬉しよ……」
ハカセが苦笑いをしながら、そっと曲がり道の右側を覗き込む。
「た、た、た、……たい、たい、……カエルのベロ!!」
ハカセがのけ反りながら戻った…
「カエルのベロ?『たい』は関係無いのよね?」
冷静にいくみがハカセにたずねる。
「そ、そ、そぉなんだよ!カエルのベロだけある!!」
ハカセがそんな事を言う為、僕達はその『カエルのベロ』を確認しなければならない訳だ。
「もう一回ハカセが見るってのも有りなんだけど…」
彩希がハカセの顔を下から覗き込む。
「彩希!!意地悪しないでくれよ!!僕は怖い!!」
ハカセ……
イザって時に役に立たない奴だな…
「ハカセさんの代わりに僕が見ます!幸い斧も盾みたいに攻撃を防げますので!!」
羽角が斧を顔の近くに持っていき皆んなに話す。
「なんだ!羽角君はだいぶ強くなったよね!でも、気をつけてよ!!」
いくみが羽角に言いながら、ハカセを見る。
そんかハカセは……オドオドしているだけだ…
「羽角見たらすぐに引き返せよ!カエルのベロが見える筈だから!!」
何でハカセが助言しながら偉そうにしてるんだか?
オドオドしているのに…
「ハイ!ハカセさん、ありがとうございます。」
羽角が言いながら、曲がり道の右側を覗き込む。
「ウワァ!!!」
羽角がひっくり返りながら戻ったのだが……
「は、は、ハカセさん!あれは、ベロじゃ無いです!!ナメクジです!!!」
羽角がハカセに言った。
「何なのナメクジが其処に居るって事?ベロと間違えてるんだ…」
彩希が言いながら刀を構える。
「羽角、それで動いてるの?」
朱音が羽角にたずねるのだが……
「一瞬だったので、分からないのですがナメクジの顔は見ました!大きさは軽トラみたいな大きさでした!」
羽角は本当に一瞬だったので、ナメクジと確認出来ただけでも頑張ったと思う。
って……軽トラみたいな大きさって、こんな場所に居たらかなり大きいぞ?
よく、そんな大きいのをカエルのベロと間違えたよ…
「では、羽角殿の言う通りならナメクジを斬り落としましょう!!いくみ殿、肉は売れると思います。」
ミアータが剣を構えている。
「ちょっと待って!ナメクジの肉って売れるの?何に使うのよ?」
いくみの質問は……僕も気になるぞ?
「いくみ殿、ナメクジの肉なら食用です。塩漬けとかもなかなか美味しいですよ!」
ミアータさん?
ナメクジさん……塩って……
「此処でのナメクジなら塩は大丈夫!山のナメクジは全く塩を浴びると溶けてしまうのですが……」
ミアータが言うのなら本当なのだろう…
ナメクジか…