310
「なんだかんだ言いながら、私達って勝ってるのよね…しかも、それ程ピンチにもならないで……」
彩希が急にそんな事を言ってはいるのだが、ピンチは無いかも知れないけれど……圧勝でも無いのだ。
「なんかよく分からないうちに勝ってるんだよね!キラーちゃんの魔法が最初は殆どだったけど、これでも最近じゃあたしでも倒す事が出来てるのが不思議なのよ…」
いくみが言っている『不思議』だが、それでもいくみは色々と試行錯誤を繰り返していたのだから、ようやく自分に適した戦い方が見出だせたのではないか?と、僕は勝手に思った。
「そうだよね!いくみは最初から今みたいな感じでは戦ってなかったもん!まぁ……桃も、今は足軽なんだけど……」
桃さん?
まだ足軽なのですか?
「桃の『足軽』ってのが、よく理解出来て無いのよ…恐らく今、此処で『足軽』って言ってるのは、桃しか居ないんじゃない?寧ろ『魔法使い』の方が分かりやすいし。」
朱音さん?
微妙に私の事をディスってません?
「……キラーの『魔法使い』は、そんな簡単に真似出来ないから……桃の『足軽』は……何をやる人?」
すずかが言う程疑問な役割りなのが桃なのである。
「ホラっ!右側に行くよ!」
彩希から話が始まったのに、左側に行くと危険らしい十字路に到着した為、彩希に言われるって……
「この先の右側の扉を開けてからだね!変なの出て来なければ良いんだけど…」
いくみが刀を右手に持ち、左手も添える様に構えだした。
「……問題は冒険初心者を狙っている強盗する輩が多い事だ…強盗は逃がしても利点は無い!強盗と認識したら即座に倒す!!」
ミアータが強盗に対する心構えを話す。
実際本当に出くわすと、『即座』の動きは皆無に等しく相手も此方の事を探りながらなので、戦闘迄は非常にスローなのである。
「……本当に、強盗は倒しておかないと…私達なら訓練するのにちょうど調整出来て良いわよね…個人的には嫌だけど……」
すずかは相変わらず嫌なのは分かるのだが、勝利後の金品探しに早いのはすずかなのだ。
「ミアータさん、では僕が!!」
いつの間にか最前列に居た羽角が、扉を勢いよき開けた。
「……居ないみたいね…急に羽角君が開ける事にしたのは、何かあったの?」
彩希が少しホッとした表情で羽角を見た。
「はい!昨晩、ミアータさんと話して…僕が開けた方が、ミアータさんがすぐに攻撃出来るって事を話していて、僕が一度開けてみようか!って事でしたので。」
羽角が言いながら、ミアータを見た。
「私が開けると、私としてはロスタイムが生じてしまったので、羽角殿と相談して今回の様にしてみたのだが、残念ながら敵は居なかったみたいだ…羽角殿、次の場所でも宜しくお願いする。」
ミアータが羽角に軽く頭を下げた。
一緒の部屋だったのに、知らずに僕とハカセは眠っていたみたいだ…
なんとなく勝っているみたいであるが、それぞれ努力をしているのだ。
結果が伴っていて良かったよ……