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「じ、冗談だよ!みんな本気にするから……」
「ハカセ?本当に冗談だった??」
ハカセの冗談発言に、彩希の刺す様な視線をハカセに浴びせる……
「す、すいません!!間違えました…」
ハカセ…謝れて偉いよ…
あれを言い切れば、また怒られてるぞ!
「そんな事、どうでも良いから行くよ!!」
最終的にはいくみに『どうでも良い』って……
直進は暗くて先が見辛かったのだが……
「そうね…向こう側と同じ扉があるのね…」
彩希が刀を少しギュッと持ち直しながら話す。
この先は結局同じ様な扉を開けなければ進めないのが分かった。
「あんなにT字路で大変な思いをしていたのに……また扉か……」
桃の言う通り、扉を開けるのは、若干躊躇してしまう。
それは扉の先が開けなければ理解出来ないからなのだが、前回みたいに待ち伏せされてもおかしくないのである。
「私が扉は開けるので、ハカセ殿が盾で防いで行きましょう…ある程度作戦を考えておかなければ、厳しいと思う…」
ミアータが慎重になるのだから、僕達が余計緊張してしまう。
因みにミアータは地下迷宮に入るとすぐに本来の姿である、ガーゴイルの姿になる。
街では紳士的な人なので、今の姿からは他人から見れば同一人物とは思えないのだが……
「ミアータみたいな人達って大勢居るのかな?あたし達はミアータを知っているから大丈夫なんだけど、他の人もそんな感じの人達って居るのかな?」
いくみが一度気になると聞きたくなる様な事をミアータにいきなり聞き出した。
「区別はつかないのだが、かなりの人数が居ると思う。違いは戦闘になれば正体を出すのでは無いかな?」
ミアータが言う通り、戦闘になればか……
それはそれで、困る気もする……
「じゃあ……そろそろ……」
朱音が扉の近く迄到着すると、ミアータに目配せをした。
「ハカセ殿、宜しくお願いします。」
ミアータも剣を持ちながら、ハカセに向かって話して……扉を蹴飛ばした!!!
ドカッ!!!
鈍い音からの………
「うん、何も居ないね…待ち伏せはね……それよりも此処って……」
いくみが扉の先を見廻す。
先程いくみが言ったのは扉を開けて、すぐに左側に曲がるのだが……
「何処に向かうと正解なのかしらね?こんな序盤から分かれ道があるから、他のグループを見かけないのか……」
彩希が言っているのは、左側に曲がるとそこには直進、そして左右に道がそれぞれあるのだ。
「当然だけど、看板も無いか…いくみのタブレットで何か情報でも無いの?」
朱音が困った時の、いくみのタブレット検索に期待をすると、
「うん!凄く大まかだけど、死にたい奴は左側に行けって!」
いくみさん?
なんか凄い情報なのか、凄い大まか過ぎる気がするのですが?
余計迷う言葉であるな…
『死にたい奴は左側に行け!』