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「思った通りの安さだったわ…」
いくみが開口一番その様な事を言ったのは、道具屋さんで売却した拾った剣の値段である。
「しょうがないよ…落ちてたのを持っていっただけだし…それよりも、よく買い取ってくれたよ!!」
朱音がいくみと一緒に交渉していたのだから、共に表情が暗くなると思いきや、彼女のポジティブな性格からか、いくみを労っているのである。
「値段付いたんだから良かったわ!!これでタダで引き取って売っていたら苛つくもの……」
彩希さん?
何処かで、以前に何かあったのですか??
「別れた昔の彼氏さんの本を全部持って行ったらそんな感じでね……」
彩希が思い出しましたながらムカついているので、これ以上は触れない様にする……
「ねぇ!ご飯の前にさぁ、蘇生場所って所に行ってみようよ!!」
桃が………あの、桃がご飯の前に行こうって言ったのである…
誰も反論は無い!!
「桃にしては珍しいわね…先に行こうだなんて…」
すずかが僕と同じ事を思っていたのか。
「すずか!!当然よ!!!ご飯食べたら、忘れるから!!」
あ………流石、桃さんでした。
レベルが違うわ……
「じゃあ、ちょっと見に行ってみようか!!」
いくみがタブレットで場所を確認している。
賑やかな商店が立ち並ぶ中で、教会には見えない…本当に普通の雑居ビルの1階にどうやらあるみたいだ。
「本当にここなの?」
朱音が言うのも無理もない……
「そうね…蘇生協会って看板出てるし……」
彩希が言いながらも、怪訝そうな顔をしている。
「こんな場所で本当に生き返るのかしら?あたしがナビしていたのに、疑わしいし……」
いくみが入り口の引き戸の扉を見ながら、物凄く嫌そうな顔をする。
そう……薄汚い飲食店って感じなのだ……
「ち、ちょっと退いてくれ!!」
後ろから別のグループの人間が……
運んで入って行ったのだ……
「見た?あの状況……」
桃が深刻な顔をしている……
「ちょっと!!羽角!!お店の隣に何をしてんのよ!!」
朱音が行ったのは……
羽角がリバースしているのである……
「す、すいません……胴体が斬られた状況を見たら……」
羽角がリバースしている理由は、先程運ばれて来た人物の状況を見たら速攻に発してしまったらしい……
「これ……中を見れないかな?」
言いながら彩希が扉を開けてみた。
「……すいません、ちょっと詳しくお話しを聞いてよろしいですか?」
いくみが受け付けで尋ねる。
彩希が開けて、すぐに入り口の受け付けに聞いている、あの二人の動きの早さに僕は完全に出遅れている……
どうやら話しは聞けるみたいである………