279
「ハカセ!ちゃんと前を見てよ!!何で壁見てるのよ!」
朱音が小声でハカセに言うのだが……
結構響いてるぞ?
「壁が出っ張ってると、イザとなるとぶつかれば痛いじゃんかぁ…ちゃんと見ておかないと…」
ハカセはみんなを守るよりも、自分を守ってるのか?
「大丈夫だ!ハカセ殿、死ななければ治せる!!」
「いやいや、ミアータ!怪我もしたく無いんだよ!!分かんないかなぁ……」
ハカセがミアータに慌てて訂正している…
「毎回だけど……此処を曲ってすぐに何か居るっぽいのよ?何なの?この緊迫感の無い空気……」
言いながら彩希が刀を構えると……
全員がようやく戦闘態勢になった。
まぁ…構えただけなのだが…
「いい?右側に居るのが、何なのかを確認しないと駄目だからね!」
勿論いくみの言う通り、全てが敵な訳でも無いのでこの状況が非常に難しいのだが、今の状況が行動をする事に本当に大切な準備なのである。
「ほら、ハカセ!!スッと行く!!!」
彩希に背中を押されて、ハカセがT字路の真ん中に立つ……
「うわぁ!!!」
ハカセがすかさず戻るのと同時に、理由のわからないピンク色のゴムみたいのがハカセがT字路の真ん中に居た場所へと飛んで来た。
……勿論ハカセは戻った為に大丈夫なのだが…
「……何?あれ?気持ち悪いの……」
いくみが押し殺した声で、ハカセに聞く。
「……カエルが居るんだよ…カエル……なんかで見た事ある大きいカエル……」
ハカセがカエルみたいな目をギョロっとさせながら、言ったのだが……
「えっ!じゃあ、あのピンクのは……ベロ??」
桃がすぐさま理解したみたいだが、僕も言われてみればって感じで……
「じゃあ……あれでハカセをハエみたいに捕らえようとしたのか……ハエみたいに。」
朱音の呟きに、
「朱音!!それじゃ、僕がハエみたいじゃないか!!でも……あれ危ないぞ!!」
ハエ……嫌、ハカセが既に戦意喪失してたりするのだが……
「キラー!!今の僕をハエ扱いしなかったか?」
ハカセにツッコまれるとは……
「ゴミ!!、じゃなくて…ハエ!!うるさい!!」
彩希がもっと酷い事言ってるし……
「キラー、彩希って酷く無いか?僕をハエとか……挙句にゴミ扱いって……」
ハカセが急に僕に同情を求める……
「ウジウジ言うな!!ウジ!!!」
いくみの方が更に酷いな……
「それで、まだ見えないけれどその問題のカエルはどんなのよ?ウジ虫さん…」
すずか……
「本当だよ!すずか!!いくら『さん』を付けたって、ウジ虫さんって酷く無いか?」
ハカセが随分と頑張って反論しているが……
「早く説明しなさいよ!ゴミ虫さん!!!」
彩希……
どんだけハカセの扱いが酷いんだよ………