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「このスロープさぁ、本当に嫌な感じなんだけど足元滑るよね。」
彩希が早くも中に入りきる前から文句である。
「彩希、よく見てごらん……」
ボソッと朱音が彩希に言ったのだが、僕もつられて足元を見た………
「うわぁ!これ………血だわ…固まってないって事は、新しいのか……」
僕は血を見るといつもの様に握力が無くなるのだ…
それをしっかり見てしまった為、いつもの様に何も持てなくなっている。
「これさぁ、さっきあたし達が入る前に話していた時に皆んなで運んでたよね…チラッと見たのよ……」
いくみが怒っている時にだよね…
僕は見て無かったけど、チラッと見えるのならスカ…………
「キラー君、朝から随分なネタを毎回毎回……」
彩希の睨みからの一言で、自分を制御した……
「キラー!制御してないし!!既に半分言ってるし!!」
桃〜
僕は、スカートの半分迄しか言ってないじゃんかぁ!!
「キラー君、今……言ってるわよ……みんな緊迫感を出してる時に、何で一人で切り返しの下ネタトークしか出て来ないのよ?本当に不思議ね…」
彩希に言われた、切り返しの下ネタトークって言葉が、何気に巧い!って勝手に思ってしまった……
「いくみが見てた人は勿論、ここのスロープで転んで血だらけになった訳では無いよね…何か居るんだよね…」
朱音が早くも薙刀を構えながら歩く。
「大丈夫だ!私が治せるから、全員安心して負傷してもらって下さい!!」
ミアータさん?
言い方間違えてません?
「……確かに!!ミアータが治せるんじゃない!!キラーちゃん、無事に怪我出来るよ!!!」
いくみさん、追い討ちで言い方間違えてませんか??
「……キラーの怪我なんか、一晩で治せるのだからミアータの治療も必要無いんじゃない?」
イヤイヤ、すずかさん?
怪我すると、痛いじゃない!
すぐにミアータが治せるのなら、治してもらうって!
「死ななければ治せるので、気軽に怪我して大丈夫だ!」
だーかーらーー!!
ミアータさん?
気軽に怪我する奴なんか居ないって!
ゆったりとなだらかなスロープを降りた場所にまだピカピカの看板が立っている。
「えーと……『無理に進むな!戻る事を考えろ!!』随分と、上から目線の看板ね。親切かも知れないけど……戻る?」
あの………いくみさん、今の衝撃発言は??
「何よ!!誰も笑ってくれないの?全く冗談すら通じない!!」
えっ!今のいくみの冗談だったの??
全然本気にしか聞こえなかったよ!!
「キラー君、いくみもシャレを言わないで、一生懸命ギャグを考えているのだから、笑ってあげなさい……」
彩希のこれは大丈夫なの??
「もう!!彩希まで!!あたしの冗談を全然理解出来ないんだから!!」
そりゃ、いくみさん…
難し過ぎるって!
しかも、彩希……『笑ってあげなさい』って言うか?本人目の前にして??