232
「でもさ、あんなに一気に二人で斬り落とすなんか頭に無かったよ!」
朱音が興奮気味に話す。
そう…川からようやく離れて先に進んでいるのだが……
全員のテンションが、先程のガーゴイルとコウモリ男との対戦の結末である。
「だから言ってたじゃない。いくみと小春の三人で自主トレしたのよ!今回は結果を出せる自主トレだったから、成果が出て良かったわ!」
彩希が刀に付着した血を拭きながら、朱音に話している。
実際彩希が昨日コウモリ男を斬った感触から、同じ武器を持ついくみと、戦闘に実践を出していた小春の三人で自主トレをしていたのを僕は本人が言うまで気が付かなかったのである。
「本当に彩希が昨日やらなければ、あたしはいつも通りの刀を構えてるだけの人だったよ!初めて本当に斬ったけど…手の震えが止まらないや」
確かに、いくみの手が震えている。
その為、彩希の様な刀に付着した血を拭い取る事をしていないみたいだ。
「彩希さんと、いくみさんにアタシもチカラになれる様に一緒に鍛えて良かったです!アタシは今回は駄目だったけど…」
小春が一緒にやっていたのと、彩希といくみの結果を見たら…何となくだが、筋力を着けたのだろうかと考えてしまう。
「ハズレ〜まぁ近いけど、速さを鍛えたのよ!斬る速さが無ければすぐに斬れないから!!」
彩希が教えてくれたのだが、たった一晩で速さがそんなにアップするものなのだろうか?
疑問である。
「今までが遅すぎたの!速さをつけるのに、意識する事を訓練すれば一晩でこんなに結果が出せる事を証明したわ!」
いくみの言った意識する事を訓練って、結構難しい事なんだろうけど…
「今までが『何かあれば』だったのを、『一瞬で行ける』って考え方が大きいんだと思います。だから、すぐに斬り落とす事をして、すぐさまキラーさんにお願いしたのだと思いますよ!」
小春が嬉しそうに僕を見た。
「そうだよね!一瞬って大切なんだよ!桃も足軽になったばかりの頃に動けたんだもん!忘れてたよ!!」
桃さん……
すいません、僕は桃さんが足軽だったのを忘れてたよ……
「あっ!そう言えば桃は足軽だったのね!一番槍使いと勘違いしてたよ…」
朱音さん?
一番槍使いってのが、僕には理解するのが……
「いつも『一番槍』って言ってるじゃない!私も思ったわ…」
すずかが言うと、冗談には聞こえなくなる。
凄い性格がみんな出ている。
「本当はガーゴイルを倒そうとしたけど、無理そうだからコウモリ男にしたの。あれだっていくみと打ち合わせしてないのに、普通に同じ相手を斬れたからね!」
彩希はガーゴイルを狙ってたのか?
「最初に彩希が聞いた時に、返事をしたコウモリ男にしようって目配せするから。彩希のわざとらしい質問を更に念の為ガーゴイルにも話して、質問を違和感無くすって考え方が彩希だなぁ〜って思ったよ!」
いくみが彩希とそんなに巧く併せて攻撃出来たのが驚かされた。