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「ここで戦闘があったのは分かったわ。何が居たのかは疑問だけどね……問題は、この先の……」
彩希が言いながら視線を先の方へと見る。
「カニじゃ無いよね。もっとカニなら大きいから……」
いくみが確認しているのだが……
「コウモリだよ…また居るんだ…」
桃が言うと同時に槍を構える。
「この前の声の主がコウモリならどれだけ気が楽だか……どうも違うみたいね…」
朱美が言った結果の声の主は、コウモリでは無いみたいだ。
薄っすらと何かを言っていたのだが、聴き取れなかった。
ただ、声の感じから別人の声とは確認出来た。
30メートル程か…歩いて近寄ると、コウモリ男は血塗れであった。
「……お、お…オマエラ!!俺を助けろ!!」
振り絞る様にコウモリ男が此方へ救いを求めた。
既に、右側の腕と、いつもある羽根が見当たらない。
どうやらあの血溜まりは彼のだろうと思われる。
「包帯しか無いわよ。一応私達も貴方がたに襲われるの嫌なので、自分で巻いて下さるかしら?」
すずかが包帯をコウモリ男に投げた。
そう…
危険性が無いとは言えない。
冷たいとは云え、これが限界の優しさでもある。
ましてや、僕達もコウモリ男に襲われているし…
倒してもいるのだから。
「それで、誰がそんな事をしたのかしら?自分の血は飲まないみたいね。」
彩希が聞きながらも、とんでもない事を平気で言い放ってる…
「あぁ…一応礼を言う。ありがとう……それで、襲いかかる時に一瞬で叩き落とされた…乱暴そうな男一人だ。斧だったな……そう、そこの斧よりもっと大きな斧だ…」
コウモリ男は自分で包帯を巻きながら、話す。
乱暴そうな男一人ね…
斧か……
「確か、ブシャーの所になんとなくだけど、そんなの居たよね…名前なんだっけ?」
いくみが言ったが……
「??居た?記憶に……」
朱音が記憶に無いのか?
「僕、クリスタルの時に何も話さない大きな斧を持った男の人の記憶があります!同じ斧だったので…」
羽角が言ったのだが……
居た??
「ヤマガクとかヒツバーは目立つけどね…多分ニフエイの事じゃないかしら?」
彩希のそんな記憶力は強いなぁ。
「斬ったのがニフエイかは、何とも言えないけどね…」
彩希が付け足す。
確かに確認出来ていないからね。
「ニフエイ?」
あー!!
朱音の記憶にはそんな程度の相手だったらしい…
「あー!!!思い出した!!アタシそいつにナイフ刺したよ!!」
いくみがいきなり大声で叫んだ。
「えっ!?いくみ、そんな事したんだっけ?」
彩希はそんな記憶は思い出さないらしい…
「そうそう!あの、クーデターの直前だ!!」
桃の言うクーデターとは、あの…水泡蘭のあの事件だ。
「へぇー、いくみがねぇ…」
朱音さん?
記憶に………
僕すら思い出したよ??
こんな話しをしているが、コウモリ男は黙々と…苦しそうに包帯を巻いている。
相当厳しい容体ではあるな……