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大トカゲとサメの共倒れの光景を目の当たりにして、僕達は少々放心状態だったのだと思う。
人にも襲いかかる生き物が、別の生き物と戦い、そして共に息を引き取るのであるから、見ているだけでゾッとするのも理解出来るだろう。
然しまだ戦いは終わりでは無かったのである。
「ホラっ!!出てきた!!」
桃が指差す場所には大トカゲとサメが両者噛みついたまま倒れているのだが、なんと……川から出て来るのが居るのだ。
「サメには一撃で食べられたのに、こんな時に狙って出て来るのね…」
彩希が言うのは、勿論あの巨大なカニである。
しかも今回はサメとトカゲを食べる事に集中して出て来たみたいで、僕達の事は全く無視している。
「あ……まだ……」
いくみが驚いて、やっと発した光景は…
カニが……他のカニ達が出て来たのである。
その数6匹。
一斉にトカゲとサメは最高の彼等の食事となってしまった。
「本当ならキラー君に纏めて燃やしてもらいたいけど、流石にそれは摂理に反しているわよね…」
彩希の言う通り、ここで倒してしまえば6匹は出て来る事は無くなるのだが、他にも居るのは絶対だと思うし、寧ろわざわざ倒してまでとか色々考えてしまう。
「早く通り過ぎましょ!ここで見ていたら、思い出した様に狙われるわよ…」
いくみが朱音とハカセの間に入り歩き出す。
それを粛々と僕も他のメンバーも歩いて、カニ達の食事会から場所を遠ざけた。
「カニはさぁ、ずっと見ていたのかな?だとしたら怖いよね…」
桃の言う通り、あっという間に6匹出て来たのだ。勿論見ていたのであろう。
「多分ね、カニはサメが落としたのを食べようとしていたんじゃないかな?あれだけ川でバシャバシャ暴れていたんだから、気が付くんじゃない?」
朱音の言うカニは残り物を食べるという案は僕も納得出来た。
「だいたいそんな感じよね。私達もうっかり川沿いでキャンプとかしてみたら、誰も朝を迎える事は出来ないでカニのごちそうになってしまうわ…」
キャンプ嫌いの彩希らしい例え話だ。
十分可能性はあるのだが…
寧ろ、その危険性が完全に今は最上位にあるのだが……
「あれだけ川からカニが出て来るって事は、そりゃ何も倒れている訳無いよね。ずっと川沿いとかで戦闘の跡が見当たらないのは、全部綺麗に食べちゃうからか…」
いくみか少し切なそうな表情で呟いた。
「そうかぁ…ここで死んだらカニに食べられちゃうのか…桃、カニ食べるの好きなのになぁ…カニに食べられるのは好きじゃ無いなぁ…」
桃さん!
当たり前だよね!!
でも、目の前起こった事が実在した事なんだよね。
「しょうがない!みんな気を引き締めて行くよ!!」
朱音が自分にも鼓舞する様に進み出した。
まだまだ、何がおきてもおかしくない場所である。