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「なんとなくだけど、僕からやってみるわ…」
いつも指示されてから僕は動いていたのだが、今はそんな悠長な場合でも無かったので前回の反省から考えていた事をやってみようかと思う。
いつもの様に、野球の素振りからの……縦に鉄パイプを振り落とした。
ドンッ!!!
上手い具合に大トカゲの口にヒットしたのである。
「あっ!そんな小技を使ってたのか!!」
彩希に言われたが、別に小技じゃ無いよなぁ…
「じゃあ、小技と言わないで細かい技で良いかしら?」
彩希〜
これでも結構繊細な技だったんだよ!!
そんな事を言ったのは、大トカゲの舌が毎回ペロッと不気味にあの縦に出て来るタイミングで火を放ってみたのである。
「よくタイミングを掴めたよね!ホラっ燃えては無いけど逃げようとしてるし!!」
いくみが言いながら、指差す。
「逃げてくれたのなら、わざわざ追う必要も無いわよね。毒もあるみたいだから、さっさと居なくなってもらいたいわ。」
すずかは一切大トカゲを捌く事はしない予定なので、言いながら大トカゲの姿をジッと見ている。
「あっ!意外とダメージあったみたいね!」
朱音が言うのと同時に右側にある川の方へと、大トカゲはフラフラふらついて歩いていた。
ザバンッ!!!
なんと……
全員言葉を失う程驚いた。
「さ、さ、サメがトカゲを!!」
桃がようやく出た言葉が、今…僕達の目の前で行なわれている。
簡単に言ってしまえば、サメが川沿いに来たトカゲに噛み付いたのだ。
光景としては、サメの方がトカゲよりも圧倒的に大きいのがサメがトカゲを噛み付いた直後に理解出来る。
サメも流石にカニの時の様に一口ではいかないみたいで、トカゲの右脇腹付近に噛み付いている。
暴れるトカゲと噛み付いて離さないサメとではあるが、川の中に引き摺り込むサメの方が圧倒的に有利である。
全員が黙って自然界の厳しさに立ち竦む。
「……結局、トカゲは無理みたいよね…別にどっちも応援している訳でも無いけど…」
カサカサの声になって、いくみが言うと……
「ち、ちょっと!!」
朱音が前方を指差す。
「サメがお腹出してるんじゃない?」
彩希の言う通り、サメが………
近くに寄ると、死亡していた……
トカゲも同じく……
「どう言う事??」
ハカセがちょっと普段よりも1オクターブ程上擦った声で言ったのだが……
「相当な毒なのね…」
すずかがサメを見ながらこの様に言う。
どうやらサメに噛まれながらも、トカゲはサメに噛みついたらしい。
ちょうどサメの頭付近にトカゲの顔があるのだが……
トカゲが噛みついいた。
そして、トカゲも致命傷だったのだろうが、川から陸のギリギリ…つまり、川沿い迄辿り着いて力尽きたみたいだ。
「あっという間に、あの毒は効いてしまうって事なのね……今度遭遇しても、絶対に近付いたら駄目って……」
いくみが言いながら、そのサメとトカゲの戦いの結末を見ながら、言葉を失う。
「あまりいい気分じゃ無いけど、これからはまだ何方も私達の前に出て来るかも知れないのよ。その時にはある程度今回みたいに、危険だって事を忘れない事ね…」
彩希も言葉を出し辛いのだろうが、今の目の前にある戦いの後の光景をじっと見ていた。
しかし、本当にあっという間の展開に僕達は果たして本当に対応出来るのだろうか?
毎回なのだが、不安は増す一方である。