192
「……随分と騒がしい人達だな………」
川の流れの音と一緒に聞き慣れない男の声が聞こえた。
「えっ?!キラーちゃんなんか言った?」
いくみに言われたが、勿論僕の声では無い。
「キラー君の声だったら、そんな渋い声は出ないって!」
彩希さん?
まぁ…そうですけど、今はそんな事言ってる場合でも無いでしょ??
前方の暗闇からバサバサと音がしたと思ったら、人みたいな…でも翼を両側に持っている者が出てきた。
「あ〜、うるさいのは君達かね?あまり洞窟内で楽しそうにしないでもらいたいものだな…」
真っ黒な翼をもつ男の声の主の顔は……
コウモリみたいな顔をしており、口には……牙が二本!!
「えー??ドラキュラ?吸血鬼??そんなの居るの??」
朱音が槍を構えながら言うと、
「私は吸血鬼では無い!!鬼では無いからな!!吸血コウモリだ!!」
男が言い切る。
「なんか噂話で聞いてた吸血コウモリとビジュアルが違うんだけど…しかも、人みたいな格好しているのに、自分で吸血コウモリって言い切るのも変だし…」
いくみが今回向かう前に言っていた吸血コウモリの想像とは、僕の頭でも全く異なっていた。
男は身長2メートル位はあるのではないか?痩せ型の普通に両足で立っており、両手もあるが、背中部分に翼を持っている。
今は微妙に畳んでいるが広げれば片側1メートルは軽くありそうな感じである。
そして、鎖帷子みたいのも着ているのだ……
顔は完全にコウモリみたいな感じなのだが、いったい何者なのだか??
「吸血鬼のコウモリバージョンみたいな感じなんじゃないの?」
桃の言葉に、
「違うよ!コウモリの吸血鬼バージョンでしょ!!」
彩希の謎の反論。
でも、コウモリの吸血鬼バージョンの方が言える気もする…
「私は吸血鬼では無い!!鬼では無いからな!!コウモリである。変な間違いをするな!!」
何故か鬼を嫌う奴だな…
しかも、普通に会話が出来るのも良く分からない。
「もしかして、血を吸われたらそんな姿になるの?嫌だわぁ…」
怪訝そうな顔をして朱音が相手の顔を見る。
「吸血されても私の様な姿になる筈ないであろう。蚊に刺されて、自分が蚊になると思った事があるのかね?」
なんか凄いもっともらしい例え話を持ってくる奴だな…
「だってねぇ〜よく吸血鬼に吸われたら、吸血鬼になるって言うし!!」
彩希がそんな例え話を持ち出す。
「フッ……だから、私は吸血鬼では無い!!吸血コウモリだ!!間違えるな!!」
随分と吸血鬼と言われるのを嫌う奴だな…
種類が違うのだろう。
さて……この、状況から僕達はどうすれば良いのか?
全く先が読めなくて困る……