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「この横を流れている川ってさぁ、あの池から流れているのよね…」
彩希が言う川はちょうど今、歩きながら発見したのだが、池の時とは全く違う……用水路みたいな川幅は3メートル程で、流れは非常にゆっくり流れている。
「雨樋の番人が流れを調整してるんじゃないの?暇そうな仕事だし。なんだよ、雨樋の番人って!カッコ悪い〜」
いくみが随分とガーゴイルの悪口を言いまくる。
「珍しいよね。いくみが随分と嫌ってるのって!」
朱音がいくみの顔を見ながらそんな事を言った。
「当然よ!情報も全然無かったんだから!カニに便乗して出てくるなんか、ロクなもんじゃないわ!」
相当いくみはガーゴイルが嫌いなのだろう。
「昨日寝てたら急にそんな気がしたのよ!あの街に居た人達はみんなガーゴイルに勝ってから此処に来たんでしょ?私達は勝っては居ないしさぁ……」
「いくみ、こっちは頭で勝ったのよ!よく私の簡単な言葉にキラー君が反応してくれたなぁ!って事で、ガーゴイルに知力で勝って来たの!体育会系じゃなくても、ちゃんと進んでいるんだから!」
彩希がいくみを宥める。
結構珍しい光景ではある。
「なんかねぇ…あたし、まだまだだなぁって…」
いくみが随分とネガティブな発言をしている。
「さっきの大トカゲだって、結局あたしは何もしてないんだよね…」
「いくみ!!もう一度自主トレやる?もうここからは引き返せないんだからねっ!」
彩希の言葉に、いくみは…
ハッとした表情で彩希を見た。
どう考えたのか、結論が出たのかは分からないがいくみは黙って刀をギュッと握りしめた。
次の戦闘ではまた違ういくみが見れるかも知れない。
「この水が、あの街の生活用水でもあるんでしょ?だとしたらあの池は大切だよね……なんで洞窟に池なんかあるんだか知らないけどさぁ……」
桃は大トカゲになんとか先程攻撃が出来たからなのかは分からないが、機嫌が良いのは分かる。
まぁ…そんな全員の空気感が微妙にいくみがネガティブな言葉を発した結果にもなっているのかも知らない。
ただ……
今のいくみは先程とは表情が違う気がする。
少しは元気が出たのかな?って感じである。
なかなか複数で行動するのは大変だ。
しかし……独りで行動したらあっという間に居なくなるのは理解出来る。