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さて……紫色の大きなトカゲをどうにかして、やり過ごしたいのだが、全く策が出て来ない。
「あの格好で走ると速いみたいだから、下手に走らない方が良いみたいよ。」
いくみの言葉に、一斉に後ろを向いて走る作戦はどうやら消滅したみたいだ。
「とりあえず、火でも浴びせてみれば?」
彩希が気軽に僕の魔法を…
まぁ本当にそれが良いのかとも思うといえば思う。
彩希の言い方が軽いのは、重々しく言えば僕のプレッシャーで失敗するのが目に見えているので、軽く言ってもらえるのが有り難い。
気にする人は無駄に気にするんだろうなぁ…
僕にしてみれば『とりあえず』ってのが有り難いよね。
外したら次の作戦を考えたら良いのを思わせてくれるのだ。
「兎に角一度離れているうちにやってみて!!」
いくみがタブレットをしまいながら、刀を握りしめる。
どうせなら僕の……
冷ややかな視線をいくみから感じた。
いつも通りに、鉄パイプをバット素振りの様にした後に振り落とした。
ドンッ!!
上手くトカゲに命中した。
「あっ!燃えないや…」
朱音が薙刀を構える。
草刈りの応用をここでも使うらしく、朱音よ薙刀は下側に位置している。
「燃えないって事は、燃えないゴミみたいなモノなんだけど、キラー君が外したらどうしようかとしか考えていなかったから、効き目が無いのは想定外だわ…」
彩希がこんなピンチの時に頬を膨らませてトカゲを見ているのだが、これがまたいいの……
今度は彩希から冷ややかな視線を感じた。
「あたしもキラー君が外したら、なんとかタイミングをズラしてもう一回!の作戦しか無かったのよ!!」
あらら…
いくみも結局僕の魔法のみでいけると考えていたのか…
「あのウロコね、小春の弓矢も無理よ…硬いのよ、明らかに…」
すずかが冷静にトカゲの姿から、そんな残念な結果を伝えてくれた。
「でもね…裏返しにしたらそんな凄いウロコをしていないみたい…」
すずかはそこまで見ているのか…
「問題は裏返しにするのって、どうやるのよ?」
朱音の問いに、すずかがすぐさま返答した。
「朱音の薙刀で脚をはらう事が出来たら、もしかすると、もしかすると思うわ…」
淡々と言うすずかだが、恐らく朱音の薙刀の速さを今回は期待しているのではないかと思った。
「って事は、もう少し近くに行かないと厳しいのか…」
いくみの言う通り、まだ微妙に遠いよね…
だから魔法も出しやすいのだが……