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「私達が逃げるのは、いつもの事なのに……遂に敵が逃げたねぇ…強くなったとも思えないけど…」
彩希がヤレヤレ…みたいな表情で全員を見た。
今は、池からようやく離れてまだBブロックの中ではあるのだが、全員がここならカニも出ないだろう…と、思いながらようやく全員で会話が出来る様な落ち着いた雰囲気になった。
「一番の活躍は、小春だよね!よくあんな事を仕込んできたよねっ!」
いくみが嬉しそうに小春を見た。
「本当にあの灯油を含んだのは驚いたけれど、それより私はあのハサミにしっかりと矢が刺さった事に驚いたわ!」
すずかが言う通り、過去の小春ならそこまで力強く矢が刺さったイメージは無かった。
「あっ!それは…羽角が怪我をして、みんな個人練習していた時に、アタシは筋トレをしてみました!まさかこんなに効果があるとも思わなかったけど、刺さりましたから、良かった!!」
小春が嬉しそうに、いつもより大きな声で喜んでいる。
みんなそれぞれ羽角が負傷した時に自主トレに励んでいたのが功を奏したらしい。
「キラー君はバイトしてたからねぇ…」
彩希が随分と嬉しそうな顔をして僕を見る。
本当に普通にバイトしていたのが僕で、反省点をしっかり克服して仕上げてきたのが小春だ。
「結局はキラーさんがアタシは頼りなので、キラーさんの火の魔法のおかげで成功した様なもんです!」
なんだ?小春、愛の告白か?
「あっ!以前にも言いましたけれど、全く違いますので!!」
小春が物凄く強くなってないか?
小春だけが癒しだったのになぁ…
桃も可愛いけどごちゃごちゃしてるし、すずかやいくみでは毒が強いし、朱美は強いでしょ?彩希に至っては……まぁそれはいつもか…
と、女性陣の視線を……これは殺意みたいな……
謝ってもなかなか赦してもらえないかも??
「それは大丈夫よ…キラー君がそんな感じで見ているのか、全員が分かったから…」
彩希さん……
皆様すいませんでした。
あの……
カニより厄介な相手かも知れないのが、大勢居るのである…
そりゃ、カニも逃げるよ…
はぁ……僕も早く街に逃げたい……