157
「キラー君、カニを倒すんじゃなくてさぁ……ハサミを両方共落とせば勝てるんじゃない?」
彩希が先程の羽角が斧でハサミを弾き返したのを見て、ひらめいたらしい。
「今は背中の甲羅部分も燃えてはいるけれど、内部迄はいかなそうよね…でも……右側のハサミはこっちの攻撃で動きは鈍いし、さっき羽角君か叩いた左側のハサミもちょっと弱い気がしたわ…」
彩希が冷静に戦闘を見ているのは僕は理解した。
でも……カニの左側が弱い気がしたのは気が付かなかったなぁ…
「それは、あたしも思ったよ!やっぱり弱ってきたんじゃないかな?背中と右側のハサミが燃えてるし!ついでに羽角君の斧で弾き返した場所も!!」
いくみが指差す場所はカニの左側のハサミの分かれる部分の付け根なのだが、殻?甲羅??が若干欠けているのである。
大きさからいえば非常に小さい…約10センチ程の欠損部分が確認出来た。
「あっ!僕の斧が少しは傷を付けたみたいですね!」
羽角も言われてから、ようやく気付く。
「それじゃあキラーはあの傷口付近に火をヒットさせればなんとかなるんじゃ……」
桃が言いながら、いくみの顔をチラリと見た。
「ん?桃、どうした??」
僕は桃にたずねると、
「……いくみのシャレの出番を盗っちゃったの!!」
小声で僕に言う……
この緊迫している状況で、そっちの心配かよ!
「……だって、いくみの出番じゃない!」
「桃……!!聞こえてるから!!」
「ホラっ!!いくみに怒られた!!!」
桃さん?
恐らくですが、貴女のいくみさんへの心配の動作が、彼女の怒りボタンをオンしてしまったと思うよ……
「そろそろキラーも火を出してもらえないかしら?私達も目の前にあんなの居ると辛いんだけど!!」
朱美が未だに薙刀で脚を払う様にしているのだが、時々当たった様な音は聞こえるのだが、ダメージは与えられないみたいである。
僕は先程と同じ様に野球の素振りの動作から鉄パイプを頭の上から振り落とした。
ボンッ!!
近い事もあり、ちょうど殻の欠けている部分へしっかりと命中した。
「キラーさん、アタシも追撃します!!」
小春は言いながら、弓矢を放つ。
ハッキリ言えば、小春の方が巧過ぎるのである。
見事に燃えている部分に先程と同じ様に灯油を付けたらしい弓矢を命中させたのであるから。
一気に両手共火を点けた状況であったのだが、これ以上僕達は追撃する事は無かった……
「あー!結局池に逃げたよ……火は水に付けたら消えるのとか知らなかったんじゃ無いのかな?一気に倒せたかも知れないけど……桃、食べたかった??」
いくみが最後に笑いながら桃の顔を見た。
ブルンブルンブルン!
と、桃は頭を左右に振る。
「だってさぁ、あのカニは食べてる所を見てないけど…人食べてる様なのを食べる気なんかおきないよ!!」
流石の桃も最初の光景が頭に残っている為か、カニを食べる事を断念したみたいである。
「流石に一回の戦闘でも、これは大変だね…これから何度かこの池を通ると思うけど、毎回全力で戦わないと……すぐに食事にされるわよ……」
朱音も流石に大変だったのだろう。肩で息をする様なリズムになっている。
「これは一度戻って今後の対策をしましょう。今のは結局逃げられただけだし、厄介ってウワサは現実って事も理解出来たし。」
彩希が全員を見ながら戻る話をした。
勿論、全員異論は無い。
一番の問題は全員で攻撃しても倒せなかったカニに次はいつ遭遇してしまうのか?と、言う事である。