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「それで、あのカニ……まだ大丈夫そうよね…」
彩希が刀を構えながらカニを見ているが、本当にまだ全然いける気配である。
そして、今まではお腹が見える態勢だったのが、前傾姿勢?なんと言えば分かりやすいか?平らな態勢になったのである。
「カニってさぁ、横歩きだよね……」
いくみさん?何を今更……
「そうだよねっ!キラー!!横歩きになったら甲羅のコケ部分が狙える筈だよ!」
朱音の言葉にようやく気が付く。
「せめてそれ位の事は自分で気が付いてもらいたいんだけどね…」
いくみが少し緊迫しているのに、笑みを魅せた。
「キラーが火を使ったら、桃は朱音と脚を狙うから!!」
桃が槍を構える。
朱音と一緒なのは、勿論このメンバーで二人だけ長い武器の持ち主という事なのだが、すずかの鉈は本当に至近距離にならなければ斬り込めないのも確かな訳で、全員がしっかりと今回は攻撃の割り振りを出来ている様だ。
「なんでキラー君が一人で理解出来ていないのかが、私には不思議だけれどね…」
彩希も刀を構えて僕の火を使った後の事に備えている。
「ほら!横を向いた!!」
ハカセの言った言葉と同じくして、僕の火の魔法が
カニの甲羅部分に向かっていった。
カニは池側にお腹を出して壁側に背中を見せる様な態勢、つまり左側を此方に向けて迫って来る。
放った火が、ボワっと甲羅部分が燃える。
「どうやら甲羅のコケは乾くの早かったみたいね…」
朱音が言いながら甲羅を燃やしながら此方に向かって来るカニに向かって脚をはらう……
「えっ!!速すぎる!」
朱音の言葉通り、カニの動きが思ったよりも素早く一気に此方に向かって来たのである。
そして、燃えている右のハサミが一気に此方に向かって来たのだ。
ゴォーーン
「危なかった!!」
ハカセのジュラルミン製の盾がカニのハサミを防いだ。
「よく止めたね!まだ危ないけど!!」
桃がハカセを見ながら槍でカニの左側の脚を狙って突く。
「ただはね返して戻しただけだから、何も効き目が無いからね!!」
ハカセはあくまでも、ハサミの攻撃を防いだだけであるが、この防御は大きい。
「動きが本当に速すぎる!」
桃の言う脚の速すぎるのは、走るスピードでは無く脚をバタバタ動かする事を言っているのだが、その為に槍で突くのか難しくなっているのである。
「桃!あの時の草刈りを思い出して!!」
朱音が言いながら薙刀を下側に構えながら、水平に薙ぎ払う。
「そうかっ!!」
桃も同じ様に槍をカニに向けて水平に薙ぎ払う。
ガッガッガッ!!
鈍い音が響くのだが、斬れてはいないみたいである。
「大丈夫!動きが鈍ったら私達も斬れるから!」
いくみが刀で彩希と共にカニの左側の脚に斬りかかった。
ガリ!!
なんかあまり良い音ではないのだが……
「斬り抜く事は無理みたいだけど、早く抜かないと!!」
彩希か素早く刀を戻す。
ガンッ!!
「僕の斧で斬りかかった方が良かったのですが…」
羽角が彩希に向かってきていたハサミをハカセと同じ様に弾き返した。
まだ決定的な攻撃は決まっていない……
本当にこのカニは厄介だぞ…