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僕達はカニを前にして、食事中の姿を拝見して慌てて引き返す事になった。
「えーと……ごめん!私の頭では最悪な事しか浮かばないけど…」
暫く逃げた後に先頭に居た朱音がこの様に言った。
「うん……別のカニだよね……そうだよね……」
いくみも確認する必要も無い為か、タブレットを背中のリュックにしまいながら……そうだ、今回は珍しくリュックをいくみが持っていた。
そして、しっかりと刀を握りしめた…
僕のを握りしめ………
「キラー君、カニのエサになるわよ!」
彩希にしっかりと聞き取られてしまった…
まだカニとの距離は微妙にある。
およそ50メートル程か?
ダッシュで行けば7,8秒程かな?
カニの速さは知らないけど…
「さてと、もう逃げて助かる事は無くなりました!勝たないといけないみたいね。」
朱音が平常心を取り戻し、落ち着いた口調で言ったが、僕の頭では全く落ち着ける状況では無い。
「それでもキラーちゃんは変な事を言ってるの?何を考えてるんだか?」
いくみが呆れてる。
そりゃそうだ…
「キラー、背中にコケが生えてるでしょ?」
「えっ?すずか!!僕の背中にコケが??!!」
「キラー、私を驚かせないで!なんでそんな発想するのよ!」
すずかに怒られた。
カニにね……
「そのカニのコケ……燃えないかしら?これを『萌えない』とか言ったら貴方はカニのエサよ!」
すずかさん?
話で言うと分かりにくいけど…
文章なら分かるけど…
言いませんから、エサは勘弁して下さい。
「頼りはキラーの火の魔法でコケが燃えればまだなんとかなるかも知れないって事よ。」
すずかはそれでもしっかりと鉈を右手に握りしめている。
勿論今は先程の様な事を思わずに…
「いちいちキラー君が変な事を言ってるから話しが進まないのよ!ところで、すずか…コケって燃えるの?」
彩希が漠然とした質問をした。
「一応ゴミの時は可燃物だった筈よ。私の地域ではね…問題はコケが濡れているのに燃えるのかが疑問ね。」
すずかは色々と雑学に詳しかったりするなぁ…
コケって可燃物なのか!
「地域にも依るかも知れないけどね。憎い人を殺しても可燃物で廃棄出来ないのは残念だわ…」
なんかすずかが最後に物騒な事言ってますが…
ここは僕の火の魔法がやっぱりやってみる価値もありそうだ。