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早く通り過ぎたかった池なのだが……
「これは!!」
先頭を歩くハカセが足を止めた。
「って!!あの人達…」
朱音の視線の先には2名の男性がカニのハサミに……
あまり表現するのは嫌なのだが、完全に胴体が輪切りにされている…
そしてそのハサミの持ち主は…
横幅は5メートル無い程かな?4.5メートル位、高さは意外と低いか…桃より小さいから、140センチ程?
そしてハサミがだいたい僕の身長程あるのではないのかな?って事で170センチ程…
カニです。
見た目は………
水色みたいな色彩に、なんとちょっと見えただけだが、背中にコケが…ビッシリと生えているのである。
「あれがカニ?」
先程迄の桃とは別人みたいなテンションなのは、人が二人切られてそれを明らかに食べているのを見ている為か。
「ほら、やっぱり厄介な相手でしょ?あの人達、二人だけで来たのかしら?」
いくみが不安そうな顔でカニを見る。
「いくみ、ちゃんと見てごらん…気持ち悪いけど、腕が10本あるわよ…一人二本として……」
憂鬱そうな顔で彩希がいくみに伝える。
最低で5人はこのカニに倒されたとみて、おかしくないのだろう…
「……桃、まだカニ食べたい?私は要らないけれど…」
淡々とすずかが桃の顔を見ながら質問する。
「要らない!あんなのカニじゃないでしょ!美味しそうにも見えないし!!」
桃は意地でもカニを食べたいのだろうが、今の目の前にいる人まで食べるカニには完全に拒否をした。
「そうね、まだお食事中だし……既に助ける人も居ないって事は……急いで帰りましょうか?」
彩希が撤退の意思を表明した。
「今のうちって気もするね…」
いくみも同じ考えみたいだ。
僕も逃げた方が良いとは思うのだけれど、この道を毎回通らないと次のCブロックには行けない訳で、カニに毎回逃げていけるのか?そんな不安もある。
「ここは一度私も引き返した方が良さそうよ……」
朱音がチラッと桃の事を見た。
完全に桃がしょんぼりとしているのだ。
「桃ちゃん、そんなにカニ食べたかったの?」
小春が桃に聞くと、
「違うの、桃がカニカニ騒いでいたのに、あんな大変なのが出てきて、みんなに迷惑かけてるな……って……」
桃がまさか、そんな事で落ち込んでるとは思わなかった。
「じゃあ今のうちよ!」
彩希の掛け声に、僕達は退却をした。
そう……戻るのである……
まだ池の横を歩かないといけないのだが……