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「あのさぁ…クワガタ……前より歩くの速くない?」
桃が言った通りである。
結構前に倒したクワガタより速い。
「当然じゃない?大きいんだもの…一歩の幅が違うのよ…」
朱音の言うのはもっともなのだが、速いのが危険なのを倍増させているのも本当なのだが…
「じゃあ羽角、前と同じ感じでハサミを抑え込むよ!」
ハカセと羽角がクワガタのハサミを抑え込む作戦に出る為に構えた。
「正面からずっと狙おうとすると、本当に速いや…」
ハカセが多少怖さを和らげる為に呟いた。
「ハカセさん、左側お願いします!」
斧を構えた羽角の表情も強張る。
「二人共、頑張って抑えてよ!」
朱音が既に薙刀を構えてすぐに動く体勢になっている。
「勝つ事しか考えない戦いって楽しいわね…」
すずかが鉈を持ちながら、もう走るんじゃないのか?みたいな感じである。
「いきます!!」
羽角がハカセに目配せをしてクワガタに向かって走り出した。
勿論狙いはハサミを抑え込むのだが、僕達は大きな過ちを犯してしまっていた。
そう……
自分達の作戦しか考えていなかったので、相手の行動は全く頭にも入れていなかった……
大人数で誰一人としてイレギュラーな事を考えなかったのが、一番の過ちだった………