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「なんかすぐに出てきても困るよね…」
先程まで勢いよく騒いでいた桃が急に弱気な事を言い出した。
「私は今の状況なら、そのまま何か出てきた方が良いけどなぁ〜」
先頭を歩く朱音が嬉しそうに薙刀を持ちながら此方を振り向いた。
「あたしは早く倒して帰りたい!」
えっ!?
いくみがそんな事言ってるなんて…
「そりゃあ、みんなが行く!って言ってたから賛同したけど、何気にクワガタ……大変だったよ……」
それは僕も思ってる。
羽角なんか挟まれそうになってたりしたわけだし。
「私も味方があんな危ないのって初めて見たから、ヒヤッとしたわ……でもね、1日1回の戦闘じゃ……何気にお金がかかるのよね……」
彩希がいきなり現実的な事を言って、いくみを黙らせてしまった。
「……まぁ、いくみもそれは一番身近な問題だから分かってはいるでしょ?宿屋と食事だけで、他に使わなくても良い筈なのだけれど……貧乏よね…」
すずかが残念そうな顔をしながら笑った。
「ふぅ…どんな時でも貧乏は嫌だもんねっ!しょうがない、行くよ!!」
いくみが気持ちを切り換えたのだろう。
ここで暗くなってもどうしようもない事なのだから…
歩きながら、毎回この様な話しばかりをしているのだから、案外うるさくて敵が逃げているのかと勝手に解釈している。
「それで……あれはオークが……」
朱音が見つけた光景は、オークの団体がコウモリに攻撃されているのである。
「オイ!!お前等!!一緒に戦え!!」
ぎこちない言葉だが、一応人間の言葉を使えるらしい。
しかし…随分な命令口調だな…
オークは約15名程、コウモリが群がって数名が倒れている。
実際、オークを救けなければ最終的に此方にも来る勢いなのだから、やむを得ない…
「ちょっとコウモリにだけぶつけるよ!」
ボンッ!
と、珍しく僕の火の魔法を先に出してみた。
「こ……コイツ……あの時の塔の奴等だ!!」
一人の?一豚の?オークが僕達に向かって叫んだ。
オーク……
そうか………
「オレ、あの盾持ってるデブに殴られたぞ!!」
ハカセの事を指差しながら言っているが…
「僕が??」
ハカセがポカンとしている。
「…思い出したわ、ハカセがトイレに行きたくなって最強だった時の事よね…」
彩希が小声で僕に言ってきた。
そんな事あったなぁ…