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すずかと小春がクワガタの左側を通り抜ける。
横側の一番後ろ側にすずかが到着すると、すぐさま脇腹付近に鉈を振り落とす。
あまり描写的には、おぞましい光景になるのであまり細かくは言いたくは無いのだが、すずかの隣で小春も同じ様に振り落とす。
若干右側にクワガタが動いた…と、いうよりも動かしたと言えば良いのか?
「よし!彩希!!今だよ!!」
いくみのかけ声で、彩希といくみがクワガタ左側の脚を斬り落とした。
その時にクワガタがバランスを崩した。
巧くいっていたのだが……
クワガタがバランスを崩したタイミングでハカセの盾からクワガタのツノが外れてしまったのである。
と、なればツノが右側に向かって突き進んでしまう。
右側のツノを押さえているのは羽角だが、押さえているので精一杯なのだから……
ガキンッ!!!
「僕が何もやってなかったから……」
僕は丁度クワガタの正面に居た訳で、実際このままいけば役立たずで終わる筈だったのが……
僕の鉄パイプでクワガタのツノを押さえた…と、いうか受け止めたのである。
「き、キラーさん!ありがとうございます!!」
「羽角!まだ…ただ受け止めただけだから……」
そう、前後に移動されたらどうしようも無いのだが……
グサッ!!
鈍い音が後方から聞こえた。
「一番槍〜」
桃と朱音が後方の、クワガタの裏側?あの……脚がウニョウニョしている場所を桃の槍と朱音の薙刀で突き刺していた。
「ここで本当に私達の出番ね!」
彩希がいくみと共に反対側の脚も斬り落として、裏返しにした。
「えーと……勝ったって事で、良いんだよね!」
桃が額に汗をびっしょりにしながら全員に確認をした。
「そうみたいよ……クワガタ一匹に、こんな大変な事をしなければ勝てないのね…」
すずかは既にいつも通りのテンションで返事をした。
「こんなにギリギリなんだね………ふぅ……疲れた。」
いくみが刀拭きながら僕の方を見た。
ん??
「キラーちゃんが居なかったら、羽角君にハサミ刺さってたなぁ〜って…よく、すぐに動けたね!」
いくみそんな事を一気に言ってくるなんて、戦闘でテンションが上がっているからなのか?
「本当に私も、何も出来なかったもの…キラー君の存在すら忘れていたわ…」
彩希!!忘れんなよ!!
寂しいじゃんか!
「キラーさん!本当にありがとうございます。僕も一瞬で諦めが出ましたよ!」
羽角が本当に怖い思いをしてる訳だから。
「キラー!ありがとう!!盾から外れた時に壁に僕は飛ばされたよ…」
えっ??!!
ハカセ飛ばされてたの??
「そうだよ!反動で飛んだんだけど……」
なんと!!!誰もハカセが飛んだのを確認していなかった。
「ほら!見てよ!!ジャージが水滴だらけだし!!」
ハカセが全員に濡れてしまったのを説明しながら話している。
「怪我無いんでしょ?良かったわね!」
彩希がその一言を言っただけ……
まぁ本当に怪我が無くて良かった。