110
無駄話しをしながらも、何気に洞窟の奥に向かっているのだが……
「ちょっと待って!道が…間違えて無いのに……道が無いの…」
いくみがタブレットで道を確認しているのだが、以前に通っている場所なのは確認出来ている。
しかし前方が十字路になっている場所が明らかに壁になっている様に見える。
距離はおよそ50メートル程先なのだが、完全に塞がれている様な黒い壁になっているのだ。
「とりあえず一度近く迄行かないと確認出来ないもんね!」
言いながら朱音が歩く……
確かに歩いたのだが、即座に左隣のハカセに
「止まって!」
朱音がハカセを行かさない様にして、小声で……
「早く逃げよう…静かにね…」
朱音が前方の壁を見ながら言ったのだが、
「この壁、動いてるわ…」
彩希が見ながら、朱音と同じ様に小声で
「戻りましょ。静かにね…」
僕も確認出来たのだが、黒い壁が光の具合で光っていたりしたのが見えた時に全て理解出来た。
噂で聞いていた大きな蛇とはこの蛇なのだろう。
此方に向かう訳では無く、たまたま僕達から見て右側から左側に動いているのである。
「……兎に角今は気が付かれない様に戻るよ…キラーちゃん暫く先頭歩いて、ハカセと朱音は後ろ向きで悪いけれど、見ながら最後方をお願いね…」
いくみの指示に全員、首をコクンと頷いて静かに焦らずに退散した。
完全に見えなくなる場所迄全員が無言で、足音も気を付けている程だった為、洞窟内の不気味な色々な悲鳴や、かけ声が聴こえていたのだが、僕達は何も話さず全員が離れずにその場を立ち去った。
「それで、あれが蛇なのは分かったけれど…あんなのどうしようも無いわよ…」
彩希が沈黙を破りようやく話しをした。
「別に倒さなきゃいけないモノでも無いから、出てきたら逃げるって事で徹底しましょ!あんなの無理だもの…」
朱音が言う通り、倒さないといけない訳でも何でも無いので、逃げる事は僕も賛成である。
「壁だったもんね。顔?頭?見えなかったけど、正面に出てきたらみんなまとめて食べれちゃうよ!」
いくみが血の気が引いた表情でみんなを見回しながら刀をしまった。
「横だったからそこから斬れるか?って考えても横幅だけで5メートル近くあったわよね…一瞬で斬れるか?って考えても無理だから無理よね…長さも全然見当つかないし…」
まさか彩希が斬ろうと考えてるとも思わなかったけれど、確かに横幅はそれ位の大きさだろう。
「あれ、蛇なんだよね?桃は壁の状態しか確認出来なかったから…もう見たくないけど…」
桃がまだ小さい声で話しているのがあの遭遇した恐怖を物語っている。
さて……これから、どうすれば良いのだか…