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「呑気に大変だとか言ってないで、ハカセが原因なのだから、早く犠牲になりなさいよっ!」
彩希がハカセに毒を吐く。
彩希の刀では確かにたいして使いこなせてもいないので厳しそうだが、ハカセの盾では尚更リーチが無い分厳しそうだ。
「ところで、彩希さん?僕は犠牲になれって…?」
ハカセが今更気がついた。
「犠牲になりたくないのなら勝てば良いでしょ?生贄じゃないんだから。」
いくみがナイフを両手に蟻地獄に向き合う。
「じゃ、じゃ、じゃあ!いくぞ!」
ハカセ、『じゃ』が多い。
蟻地獄は向って来るハカセに対して頭のハサミを向けて向って来る。
ハカセにしてみればだ、両手に盾を持っているだけの勝てる雰囲気が皆無な格好で蟻地獄のハサミの右側を叩いた。
「ヤバい、全然効き目無いし。」
桃がボソッと呟いた。
「大丈夫!私は横を狙いたかったの!」
いくみが蟻地獄の左側の脇腹付近にナイフを投げつけた。
「普通こんな時って効き目があるよね。」
いくみが唖然とした表情で蟻地獄を見た。
まるで効き目無し。
「でも、蟻地獄って倒している人っているのよね。倒しても再生するのが判明しているのだもの…」
すずかに言われた通り、誰かしら倒してはいるみたいだ。
倒せたのは、勇者だな…




