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「さてと、これからが問題よ。きょうは兎に角飲んで終わりだけど、明日の探索に支障の無い様にねっ!」
毎回彩希が話の流れを仕切ってくれている。
「羽角の傷はだいぶ良くなったわね。ここの世界って何故か回復するのが早くなったりするよね。あっ、朱音とすずかの時はあれか……」
いくみが途中で口籠るが、
「そうね、致命傷じゃなければ回復するのが早くなったりするみたい。」
即座にすずかが回答してきた。
「ここの世界では…私、少し聞いただけで良く判らないけれど、私達は回復力が早いって聞いてました。実際に見たのは初めてだけれど…」
小春はまだ緊張気味に話をしている。
無理も無い、まだほんの数時間前迄別の仲間達と一緒にいたのだから…
「キラーの心の傷の方が治りが遅いかもよっ!」
朱音がニコリと笑いながら、すずかが僕の名前を知らなかった話しをみんなに説明した。
勿論、すずかが疑心暗鬼になっていた事は話さないで…
「明日は5階から行けるから、結構楽になるのかな?早いグループはどんどん上に行けるみたいだけれど、噂では40階より上に行けるのは難しいみたい。」
彩希の情報はなんとなく今回矛盾しているのだ。
「つまり、上に行けても40階の何かでみんな駄目みたいなのよね。理由は知らないけど、なんか強いのでもいるのかしら?」
彩希の情報ですら、解っていないのだから、僕に判る訳は無い。
「まっ、兎に角メンバーも増えたんだから、明日からも元気に行きましょ!」
いくみが乾杯の音頭を取りながら夜が更けていく。
明日という日を毎日迎えられる様に。