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「この階でさ、さっきみたいのを見せられたら…飽きたとか言ってられないね。」
重い空気の中、朱音が気を引き締めた顔をして全員を見回した。
「そうだね、いきなりお別れは嫌だな。まして、あんなムカデとかに食べられちゃうなんて…」
同じく、暗い表情でいくみも話している。
「だいたいさ、大ムカデなんて鬼太郎の世界でしか知らなかったのに、本当に居るんだね。」
僕の言葉にみんな無反応。
「おいっ!鬼太郎!」
桃の槍の柄が無駄な真似をしたハカセの腹部にヒットした。
「桃に助けられたわね、もう1テンポ遅ければハカセのクビが落ちてたわ…」
彩希怖いって…
「嫌、本当にみんなで沈んでいるのもこれからを考えたら、ちょっと違うなって僕も思っていたから、鬼太郎の話を振って、ちょうどハカセが真似をしてくれて……」
僕の話の途中で、
「あれは、目玉おやじ!」
桃のツッコミがきた。
重い空気の中に少し渇いた笑い声が出た。
僕は小声でハカセに、
「ありがとう。」
暗いのは嫌だからね。
まだこれからも大変だと思うけれど、油断は要らないが暗いのも要らない。
そして女の子の笑顔があれば僕は生きていける!
「最後のは要らないんじゃない?」
彩希が耳元で囁いた。
何故判る?