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「キラー君にちょっと忠告。」
いきなりあんな無茶振りからの彩希が小声で僕に言ってきた。
「その、忠告ってなんか嫌な気配がするけど……」
僕は彩希の忠告に既に怯む。
「いえ、落ち着いて聞いて欲しいの。あるモノが無くなっているって事を気にしておいて。あまり大袈裟に言いたく無いけれど、あのオオチマイは曲者よ。あったモノが無くなっている、そんな不自然さを自然に振る舞っているのが、オオチマイって事で…みんな気付かないかしら?」
彩希が意味深な事を言い出した。
僕は彩希に、
「じゃあ、オオチマイのモノが無くなっているけれど、不自然じゃなくて、自然にって事なんだね?」
自分でなんとなく納得させようとして、パッ!と頭にその意味が閃いた!!
「えっ!!!!じゃあ!オオチマイって元男だったの?!」
大声で言ってしまった。嫌、美女過ぎるんだよっ!
『えぇぇぇぇぇ!!!』
敵味方関係無く大声を出して驚いてしまっている。
「違うわよ!馬鹿かっ!」
彩希とオオチマイに同時に突っ込まれた。
「もう……折角内密に話したのに、何を狂った取り間違えしてるの?」
彩希が呆れ顔である。
「キラー!この私が元男って何の話だ!」
いつもよりなんとなく男らしく聴こえてしまうオオチマイの声だった。
「もういいわ、貴方に遠回しな言い方は効かないのね。」
彩希が残念な顔をしながら話を続ける。
「さっきオオチマイが出てきて直ぐに黒天の首をはねたでしょ?頭も身体も無いのよ。つまり……」
言いながら彩希が上を見上げた。
一緒に見ると、鍾乳石に掴まって狙いを定めていた最上黒天がいたのだ。
「降りて来なさい、不意討ちは無理みたいわ。」
オオチマイが言っている周囲で
「あたし、ずっと一緒だったのに知らなかったよ~姫様が男の娘だったなんて…」
シノメノとキョウレート、サーシイドにルイア迄衝撃を隠せない様だ。
「だから!それは向こうの、キラーの勘違いだ!」
オオチマイが味方に怒っている。
これは予想外な展開になってしまったと、僕も無駄に大声で言ったばかりにみんなに迷惑をかけてしまった。