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「ハハ!ルイアをやり過ごすのは俺も流石に手間がかかるな!」
ルイアの去った後に再び、今度は男の声が響いた。
「あまり顔合わせをできる様な立場では無いのだがね、ルイアの気になる男の姿を見たかっただけさ。そこの盾を持ったキミでは無いだろうから、そちらの三角帽子のマントの方かな?」
姿を出さない。
「ずっと隠れているわけ?確かにハカセはカッコ悪いし、話もたいして面白く無いけれどいい人よ!」
いくみちゃん?褒めてる?
隣でハカセがガッカリした顔でいろいろと見回している。
「クソー!男に迄言われて、尚且ついくみに迄言われるとお前の姿を見てやりたいよっ!」
ハカセが泪眼で上を向いて叫んだ。
「しょうがないな。」
ボンヤリとした光の影から細いしかも身長は155㎝のいくみと変わらない程の男が出てきた。
「はじめまして!俺も世間的には強盗団の一人になる最上黒天という、強盗団の中では偵察をしている者さ。まぁ…力でやられたら勝ち目が無いのでね。」
かなりの距離を作っている。それだけ力での勝負は回避したいのだろう。
「それで、何かご用件でもあるのかしら?鬱陶しいから早めに居なくなってもらいたいのだけれど…」
相変わらず彩希が敵意を出して話すと近くに居る僕達が冷や冷やする。
「やぁ!俺よりも小さいのに包丁なんか持っていて大変だね!俺はこんなのしか無いけれど……」
いきなり手裏剣みたいのを彩希にめがけて投げてきた。
「グッワッ!」
運が良かったのだろう。
僕は鉄パイプで手裏剣を打ったのである。
それがピッチャー返しの要領で最上黒天の腹部にライナーで飛んでいったのだ。
「こ…これは俺も予想外だった。ルイアに怒鳴られる前に消えるわ。今度はそんな事にならないからな!」
最上黒天が去り際に一番弱い奴みたいな事を言いながら消えて………
「オマケ!」
いくみがナイフを肩にヒットさせてしまった!
「何やってんだよ!アイツ帰ろうとしていたのに!そんなの投げたらまた…………」
僕が言っている時に奴は怪我をしながら闇に消えた。
「一体何がしたかったのか判らないけれどキラー君、ありがとう。」
彩希が素直にお礼を言ってくると此方が恐縮してしまう。
「あの手裏剣、彩希の顔めがけていたわ。よく、キラーが打ち返してくれたわ。いきなりだと動けない。」
すずかは彩希の反対側に居た。僕の右側に彩希そしてすずかの順番だったので、咄嗟に動けたのである。
「よく判んない奴だったけど、また出てくるかな?いくみがオマケで倒しちゃえば良かったのに!」
桃の槍では何もできなかっただろうから、今回は桃が静かである。
「私もオマケ!じゃなくて、本当はトドメって言おうとして間違えたの。」
いくみでもそんな時があるんだ。
嘘かもしれないけれど…