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聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第十二章 幕開け

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(三)母の夢①

(三)


「あるところに青い大きな大きな竜が住んでいました。

 アルフオンという名の、その竜は時々人間の住む所へやってきて、

 人間の作ったものを壊したり荒らしたりして去っていきました。


 ある時、竜はお城を襲ったのです。

 竜はお城を守っている人たちや、そこで働く人々を何人も殺してしまいました。

 ですが、お城を守っていた一人の青年騎士が竜に立ち向かい、

 竜に大きな怪我を負わせて追い返しました。


 ですが、青年騎士は竜に友達を殺されてしまい、悲しみました。

 そんな事を知らないみんなは、その騎士を英雄だと言って褒めました。

 

 騎士は褒められても嬉しくありませんでした。

 悲しくて悲しくて、つらいのに、みんなは英雄と呼びます。

 騎士はついに耐え切れなくなって、騎士であることを辞めてしまいました。


 しばらくすると、みんなは騎士の事を忘れてしまいました。

 みんなのために戦ってくれた騎士の事を。

 でも、騎士は死んでしまった友達や、お城で亡くなった人たちの事を忘れる事ができません。


 やがて、青い竜は傷が治り、またあちこちを荒らし始めました。

 でももうお城に英雄はいません。


 騎士だった青年は幼馴染みや、新しく出会った仲間と旅に出ていました。

 青年は仲間のために悪い人間や悪魔と戦いました。


 そして、住んでいた国に帰ってきたとき、

 あちこちを荒らしまわっていた青い竜に再び出会いました。

 青年は殺された人たちのため、住んでいた国の人のため、

 竜を退治しようと決めました。


 青年は仲間と一緒に竜と戦います。

 戦いはまる一日続きました。

 やがて仲間が傷つき、倒れそうになりながらも、何とか竜を倒す事に成功しました。

 ですが青年の悲しみは晴れません。

 竜を倒しても死んでいった人たちは帰ってきません。


 やがて竜を退治したことをみんなが知ります。

 そして青年と仲間たちは、英雄として迎え入れられました。


 悲しみの中、青年は騎士に戻る事を決めました。

 今度はみんなを守るために。後悔しないように。

 仲間たちもそれを助けると約束してくれました。


 青年の名前は、クリュースといいます。

 騎士になったクリュースはそれから何度も国とみんなのために戦い、みんなを救いました。

 そしてみんなは感謝を込めて、彼のことを英雄と呼んで、尊敬し続けました。

 でもクリュースは最後まで、死んでしまった人たちの事を思い出し、悲しんでいたそうです。

 これで、騎士クリュースと青い竜アルフオンのお話は、おしまい」


 物語を読み上げると、母は娘に笑顔を向けた。

「ねえ、かーさま。えいゆうってなあに?」

 娘は母に尋ねる。

「そうねえ、みんなを助けて、役に立つお仕事をした人が、みんなから褒められて英雄って呼ばれるようになるんですよ」

「さいしょからえいゆうのひとはいないの?」

 娘は不思議でたまらず、再び質問をする。

「最初から英雄って呼ばれる人はいないの」

「ふーん、わたしはみんなからほめられなくてもいいから、いーっぱいみんなのやくにたつひとになるね。くりゅーすさまとおなじ、きしになる」

 娘は笑顔を母に向ける。

 その笑顔が母には何よりも愛おしいかのように微笑み、娘を抱き寄せる。

「そうだねえ、ラーソル。みんなの役に立てる人になろうねえ」

「うん、かーさまのためにも、いっぱいがんばるね」

 娘はそう決めた。

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