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聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第十一章 エラゼルとラーソルバール(後編)

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(四)素顔のエラゼル③

 同じ頃、二年生の決勝戦が始まり、アルディスがやや優勢な戦いをしていた。

 相手はエフィアナを破っており、今年になって頭角を表してきた男子生徒で、名をザーディクスという。

 アルディス並に防御が上手く、盾を活用した戦闘スタイルも似ていた。

 やや長引いた試合も、ラーソルバールがエラゼルと共に戻ってきたのと、時を同じくして決着はついた。

 終始優勢に進めたアルディスが、相手の隙をついて有効打を決め、勝利をものにした。結果的にラーソルバールの予想通りの決着となった。


 整理係をしていた教師に誘導され、沸き返る会場に戻ってきた二人は、大歓声で迎えられた。

 恥ずかしそうに方々へ頭を下げながら歩くラーソルバールと、穏やかな笑顔で手を振るエラゼル。

 対照的に見えた二人だったが、試合場に手を取り合って上り、シェラらを驚かせた。

 合同の表彰式が一年生の会場で始まると、各学年の一位と二位が、それぞれ表彰台へと誘われる。

 脇に居た、魔術師が何やら四人に耳打ちすると、すぐに魔法の詠唱を行い効果を発動させた。

「お疲れ様でした」

 校長の声が周囲に響き渡る。試合場内の音声拡張の魔法と周囲に設置された触媒の効果だろう。

「まずは一年生。優勝がラーソルバール・ミルエルシさん、準優勝がエラゼル・オシ・デラネトゥスさん。お二人に賞品の授与です。おめでとうございます」

 名前を呼ばれ、二人はそれぞれ頭を下げ、そして手を振る。

 紹介が終わると、校長から二人に同じような大きさの箱が渡された。恐らくは記念品だろうと思われる。

「次に、二年生。優勝がアルディス・フォンドラーク君、準優勝がコルグ・ザーディクス君。こちらも賞品の授与です。おめでとうございます」

 同じように二年生の賞品授与も行われる。

「今年は、一年生の『ご褒美』で、騎士団長との対戦はありません。ご本人が、入学試験の折に既にランドルフ団長と対戦されているという理由で、辞退されました」

 校長の言葉に安堵した騎士団長何名か。下手をすれば威信に関わる訳で、できれば対戦は避けたいところだった。

 会場の脇で、それを見てただ苦笑いをしていた軍務大臣だったが、校長に合図されると、表彰台の脇に歩み寄った。

「騎士学校の生徒諸君、お疲れ様です。大会は非常に良いものでありました。そして表彰台に立たれている四名も、お疲れ様。そしておめでとう。私の大臣の任期の最後に、良い大会を見ることが出来て、誠に感謝している。皆が将来のこの国を背負う良き騎士になってくれる事を願う」

 型通りの挨拶を終えると、大臣は頭を下げた。

 台上の四人も大臣に向かって、深々と頭を下げる。

 任期が終わると大臣は言ったが、実際には軍務大臣は留任する公算が高いと噂されている。ただ、その決定権は国王が持っているため、滅多なことは言えない。

 大臣は横に居た魔法使いに目配せをすると、魔法使いはその意を察したように魔法の効果を切った。

「赤と白の競演、素晴らしかったですよ。もう無くなったと思っていた私の武人の心が、ざわつくのを感じました。またお会いしましょう」

 二人にだけ聞こえるように、優しく語りかけた。

「今度は二人が仲良く踊るところをお見せしますわ」

 小声でエラゼルが応じると、大臣は「おや」と言うと、ラーソルバールの顔を見て笑った。

 話が聞こえず、何の事だか理解できないラーソルバールは、愛想笑いで返す事しかできなかった。

「善き事、善き事……」

 嬉しそうに呟きつつ、大臣は試合場を後にする。

 この後、騎士団長がそれぞれ挨拶をして、この年の武技大会は終了となった。

 そして、間もなく一年が終わりを告げようとしていた。

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