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聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第十一章 エラゼルとラーソルバール(後編)

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(三)激突①

(三)


 シェラとフォルテシアはガイザが合流してすぐ、それを見つけたエフィアナがやってきていた。

「アルディスさんは?」

「彼は決勝待ちで向こうに居るよ。私は準決勝で負けちゃったからこっちの観戦」

 肉の串焼きを片手に、残念そうに答えた。

 勝ってアルディスと対戦したかったのだろう。少しだけ元気が無かったのだが、ラーソルバールとエラゼルが試合場に上がると、妹を心配する姉のような顔に変わった。

「気持ち良い、見せ場たっぷりの試合だと思いますよ」

 シェラは自信を持って言い放った。

 果たして、試合が始まると想定外の睨み合いから始まったのだが。


 エラゼルは受け止めたラーソルバールの剣を押し返すと、もう一度距離を取った。

「まったく、油断などしておらんというのに、腹立たしい……」

 そう言うエラゼルの顔には、言葉とは裏腹に笑みが浮かんでいた。

「いひひ……」

 ラーソルバールも嬉しそうに応じると、剣を水平に構えた。

 今度はラーソルバールが勢い良く地を蹴ると、エラゼルとの距離を詰める。

 その瞬間だった。

聖なる障壁(ホーリーウォール)!」

 エラゼルは左手を前に差し出し、魔法を展開した。

 突っ込んできたラーソルバールは、対応できずに直前に展開された魔法の壁に弾き返された。

「予備詠唱無し?」

 ラーソルバールは驚いた。

 詠唱を短縮させ、このタイミングで成功させるというあたりが、エラゼルの優秀さを証明している。

 術の効果を瞬時に解き、突然の衝撃にラーソルバールがバランスを崩しかけた所に、エラゼルが迫った。

 直線的な突きを繰り出し、わざとラーソルバールに受け流させて動きを封じると、一回転して反対からの横薙ぎの攻撃を繰り出す。

 直後に激しい金属音を響かせ、剣が受け止められた。

「それを止めるのか!」

 バランスを崩しているにも関わらず、ラーソルバールは軽々と剣を止め、その力を利用して体勢を立て直してみせた。

「まだだ!」

 エラゼルは剣を引いて素早い動きで、剣を閃かせる。だが、ラーソルバールはそれを軽く弾き軌道を逸らすと、そこから斜めに切り下ろした。

「……っ!」

 何とか体を捻って対応したものの、一瞬、剣がエラゼルの鎧を掠めた。

 安心する間も無く、その剣が今度は横から襲ってくる。何とか剣で止めたものの、ギリギリ防御に間に合った程度で、冷や汗が出るのを感じた。

(まだ対応できる。対策をすれば何とでもなる)

 剣を弾くと、再度距離をとり、息を整える。

「さすがエラゼル。楽しいね」

そう言ってラーソルバールが笑った。

「楽しくなどあるものか」

「だってエラゼル、さっきからずーっと笑顔だよ」

 ラーソルバールに言われて気付いた。幼年学校で戦った時にも、この感情は有った。

 あの時も、この宿敵との対決が「楽しかった」と後で気付いた。

 以来、宿敵に勝つことを願う半面、こうやって剣を交える時間が欲しかったのではないか。

 今更ながらに気付かされた。

 だが、勝利に対する執着を捨てたわけではない。この最高の相手を倒してこそ、デラネトゥス家の娘なのだ。


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