表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第九章 エラゼルとラーソルバール(前編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/589

(二)エラゼルの姉③

 立ち上がった暗殺者は、俊敏な動きでイリアナに迫った。だが、ラーソルバールはそれを許さず、暗殺者の剣を即座に弾く。

「小娘!」

 怒りのままに暗殺者は左手の短剣が伸ばすが、ラーソルバールはそれを反射的に蹴り上げた。

「足癖の悪い奴め!」

 剣を落とすことは無かったが、暗殺者は腕を押さえながら吐き捨てるように苛立ちをぶつけた。

 相対するラーソルバールは暗殺者をその場に射すくめるように睨みつける。

「イリアナ様、念のため警備の方を呼んでください。嫌な予感がします!」

「あら、貴女の素敵な姿をもう少し見ていようと思ったのに」

 冗談とも本気ともつかぬ台詞に、ラーソルバールは苦笑した。

「会を壊したくなかったのですが……申し訳ありません」

「気にしないで……あの子も分かってくれるわ」

 イリアナは優しい言葉をかけると、表情を引き締めた。

「レガード! バスティオ! 聞こえていたら居たら急いでバルコニーへ!」

 良く通る美しい声だった。賑やかな会場にも響き渡り、皆が何事かと静まりかえる。

「悪いけど、あなたの相手をしている場合じゃない……」

 ラーソルバールは剣を握り直すと、一瞬で暗殺者との差を詰める。

 予期せぬ動きに反応が遅れた暗殺者の剣を瞬時に叩き落とすと、そのまま首筋を柄で強く打ち据え気絶させた。


「何だ、余興か?」

 バルコニーの様子を見た招待客の一部が、何事かとざわつき始める。

「イリアナ様、お呼びですか!」

 会場に居た警備の者達が駆けつける。

「侵入者です、ここに倒れている男を……」

 イリアナが指示を出そうとした瞬間、ラーソルバールが声を上げた。

「来ます! イリアナ様は急いで室内へ、警備の方はイリアナ様をお願いします。あと、侵入者が室内に入らぬよう……」

 ラーソルバールの言葉が終わらぬうちに、バルコニーを風が抜けた。

「……!」

 突如、イリアナの背後に何者かが現れた。

「頂いた!」

 警備の者たちも反応が追い付かず、剣を抜けていない。その様を嘲笑いながら、侵入者がイリアナに剣を振り下ろす。

 刹那。白刃が煌めき、鮮血がほとばしった。

「ぐぁぁ……!」

 腕を切りつけられ、侵入者は悲鳴を上げた。

 何が起きたのか、理解できぬまま視界に入ったもの。赤いドレスが空気を孕んでふわりと揺れ、そして直後にくるりと回転して、止まった。

「ぐ……」

 悶絶するような呻き声がして、黒い塊が倒れた。

「何者だ、小娘!」

 切られた腕を押さえつつ、後退する侵入者。やや動揺する素振りを見せたが、即座にそれをかき消すと、剣を握りなおす。

 ラーソルバールは相手を睨み付け、周囲の気配を探る。迂闊に動く事はできない。

「あらまあ、私のために三人も?」

 やってきた警護に守られて、バルコニーから引き上げながら、とぼけたようにイリアナが笑った。

「いいや……」

 侵入者の口許に笑みが浮かぶ。

「五人です……、イリアナ様」

「えっ!」

 ラーソルバールの額に滲む汗。その顔に笑みは無かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ