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聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第九章 エラゼルとラーソルバール(前編)

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(一)ふたり③

「何で隠れているのですか? ラーソルバール・ミルエルシ」

 少々怒ったような口ぶりで、ラーソルバールを咎める。

「いや、何でと言われても。場違いなのが居ると色々と、ね……」

 ラーソルバールは、フェスバルハ婦人に頭を下げると、エラゼルに姿を見せた。

 ばつが悪いからか、ぽりぽりと指で顔をかく。

「来ていないかと思っていました」

 落ち着いた声と態度だった。

 学校で見る、いつものエラゼルとは違う雰囲気に、ラーソルは少し戸惑う。

 いつもはもっと居丈高で、凛としていて……。

 いや、違う。自分の責務を果たそうとしている姿は、いつものエラゼルと同じだ。

「正直に言うと、どうするか悩んだんだけどね」

「そうか、無理に呼び立てて済まない」

 少しだけ申し訳なさそうな顔をする。

 どんな顔をしても、同性をも惹き込むような魅力があるのだと、ラーソルバールは改めて認識する。

「やっぱりエラゼルは綺麗だね。持ってないはずの嫉妬心が頭をもたげてきちゃいそう」

 まじまじとエラゼルを見つめると、僅かに照れたような素振りを見せる。

「世辞はいらない。まず自分の姿を鏡で見てくるといい、嫉妬の必要など無いはずだ」

 フォルテシアのようにぶっきらぼうに聞こえるが、エラゼルの場合はどこか無理をしているような気がしてならない。

 どこからどこまでが本音なのか、分からない。

 何故、付き合いが深い訳でもない自分を呼んだのか。エラゼルに聞きたかったが、上手くはぐらかされて結局何も分からず終わるに違いない。

「花はどこに咲いていようとも、美しければ引き寄せられるように愛でる者がやって来る。これは父上の受け売りだ」

 もしかして気にしてくれているのだろうか。ラーソルバールは少し嬉しかった。

「じゃあ、エラゼルはもっと笑顔で居ればいいと思うよ。更に綺麗に咲けるように」

「む……」

 虚をつかれたエラゼルは一瞬、固まった。

 いつもラーソルバールにペースを乱される。そういう人物だと分かっているのに。

「心がけよう」

 エラゼルはラーソルバールに背を向けた。

 彼女はどんな顔をしているのだろうか。ラーソルバールは気になった。

「下らない余興だと思って付き合って欲しい」

 エラゼルは一旦立ち止まるとボソリと呟き、そのまま去っていった。

 ラーソルバールを呼び出した事に対しての負い目があるのだろうか。エラゼルの言葉と対応は少し意外な気がした。


「友人同士には見えないな」

 様子を見ていたのか、アントワールが話しかけてきた。

「ですよねぇ。彼女にとって、私は敵みたいな位置付けっぽいですから」

「んん? 敵、という感じもしないな」

 アントワールは首を傾げた。何となく感じた程度のものなのだろうか。

「じゃあ、何だと思います?」

「ね、なんだろうね。誕生祝いに呼ばれているんだし、他に同い年くらいの女の子も居ないみたいだから、彼女にとっては一番身近な人なのかもね」

「複雑ですねえ……」

 ラーソルバールはため息をついた。

 他人事なら良いが、当事者としては身の置き所が無いようで困る。

「彼女もラーソルバールのように、真っ直ぐで思い切り良くやれたらいいんだろうけどね」

「ん? アントワール様、今、さらっと馬鹿にしました?」

 怒って詰め寄るふりをする。

「してないよ。褒めたんじゃないか」

「じゃあ、そういう事にしておきます」

 アントワールの慌てた様子が楽しくて、更にからかいたくなった。

「ところでアントワール様、エラゼルに惚れました?」

 歯を見せて、ラーソルバールはにひっと笑う。

「何を言う、そんな事は無いぞ……」

 口では否定しているが、顔を赤らめている時点で説得力に欠ける。

「いひひ……」

 赤いドレスの小悪魔が楽しそうに笑った。


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