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聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第二部 : 第二十二章 暗き森への誘い

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(二)闇に包まれた森②

「ねえ、エラゼルは門石のような物の存在って聞いたことある?」

 ベッドに転がる友の顔を覗き込む。

「最新の技術なら知らぬが、似たような話なら聞いた気がしないでもないな」

「実は、歴史書の中に『アヴォレアの民、悪魔より授かりし門の扉を開き、遠方へと渡り歩いた』という一節があるんだけど……それっぽいでしょ?」

「小さな手掛かりから、良くそんなもの諳んじて言えるな。尊敬を通り越して呆れるぞ……」

 エラゼルは間近にあるラーソルバールの顔を見て、少し安心した。多少だが先程までの影が薄れているのが見てとれたからだ。

「結局アヴォレアは、門の存在を恐れた隣国に攻め滅ぼされた、と」

「そんな物があれば、遠隔地にいくらでも兵士を送り込め……先日のあれか!」

 エラゼルは体を起こそうとして、ラーソルバールとぶつかりそうになり、体勢を崩して再び倒れ込む。

「そう、まさにあれを恐れたんだろうね。大人数が可能なら尚更、ね」

 そう言って、ラーソルバールもエラゼルの隣に横向きで転がる。友の横顔が良く見え、同姓でも惹かれそうな美しさに一瞬、続ける言葉を失いそうになる。


「……で、廃墟と化したアヴォレアは常闇の森に呑まれた、と伝えられてる」

「『常闇の森は古代文明が生み出した闇の名残』などではなく、人間の闇そのものではないか……。まさか、そのアヴォレアがこの近くだと?」

「うーん、常闇の森にある遺跡の中で、どれがアヴォレアなのかは未だ正式に分かっていないんだ。森が危険すぎて調査が進まないというのが表向きの理由だけど……。夢のような古代技術欲しさに公表されていない可能性もあるよね」

 楽しそうに笑うラーソルバールは、この時ばかりはただの歴史研究家の顔をしていた。

「なるほど、それを奴が見つけた、と。……思えばガーゴイルなどを隠すには、遺跡が一番という事だな。で、歴史研究家殿は、赤土の中にある遺跡がいくつあるのか知っている訳だ」

「えっへん、遺跡群を纏めて良いならひとつだよ」

 なるほど、と言いそうになった瞬間、ラーソルバールの言葉に疑問を覚えた。

「遺跡……()だと? それではいくつあるか分からんではないか!」

「てへ……」

「笑って誤魔化すでない!」

 真横で怒るエラゼルを気にする様子もなく、ラーソルバールは悪戯っ子のような表情を浮かべた。

「うーんと、ルクスフォール領北部から、ガランシャー領南部にかけて。ね、だいぶ狭くなったでしょ?」

「広い!」

「まあ、二十日も有れば何とかなるでしょ。ならなきゃ延長申請すればいいだけだし……」

「仕方ない、やるか」

 エラゼルは苦笑いすると体を起こして、ラーソルバールの頬をつねる。

「いたたた」

「全く、一緒に居ると苦労ばかりさせられる」

 言葉とは違い、楽しそうに笑みを浮かべるエラゼルだった。


 皆が戻ると、慌ただしく早目の昼食、旅支度と動き回る。その甲斐有って、日が高いうちに街を発つことができた。

 この日は森の近くにある、炭焼き小屋が目的地だった。これはエラゼルらが帰った後、アシェルタートの発案で、一時宿泊地にと使用許可を与えられたものである。

 荷物を馬に預けているとはいえ、そこまでの徒歩移動はかなりの疲労を伴ったようで、三刻半程の時間をかけて小屋に到着すると、皆が即座に座り込む始末だった。

「これぐらいで音を上げてたら、明日から持たないな」

 ガイザの言葉に皆が頷くも、さしたる解決策が有る訳でもない。

「門石が私達でも使えればいいんだけどね」

「違いない」

 シェラの言葉で皆が笑った。


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