表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第二十章 真実と虚構の存在

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/589

(四)依頼書①

(四)


「済まなかった」

 応接室に戻って来た際の、ホグアードの第一声だ。

「頂いた書面に対し、穿った見方をしてしまった。確かに書かれていた通りだった。……だが、最後に一点気になることが有る」

「何でしょうか?」

 ホグアードの言葉にラーソルバールは首をかしげる。

「いくら強いとはいえ、君達は実戦経験は有るのか?」

 命のやり取りをしたことが有るのか、その度胸は有るのか、ということだろう。例え訓練や模擬戦で強かったとしても、いざ命が懸かると尻込みする者も少なくない。

「恥ずかしながら先日、賊を退治して参りました」

 恥ずかしながら、とは付け加えたのは理由がある。賊の発生は国内事情が安定していない事の証拠でもあり、他国の人間には特に秘匿したい事柄でもあるからだ。

「我々二人はそれ以外にも何度か……。怪物や、暗殺者ともやりあったな」

「は?」

 声を上げたには仲間の方だった。

 怪物は分かるが、暗殺者と戦ったなど聞いていない。二人に向けられる驚きの視線。その反応を見て、失言だったかとエラゼルは慌てて口を押さえた。

 さすがに魔法使いと言わなかった辺りは、配慮した結果なのだろうが。

「分かった。愚問だったようだ。正式な手続きをしておこう」

「ありがとうございます」

 ラーソルバールは素直に頭を下げた。もとより、ここでの揉め事は望んでいない。


「それと、君達は上級者相当の力が有ることは分かったが、私と同じように疑念を持つ者が居るかもしれん。申し訳ないが、中級という扱いのままとさせてもらう」

 悪意の有るものではなく、純粋に今後を考えての申し出なのだろう。表情がそれを物語っていた。

「それで行動に制限や支障が無いのであれば、何も言うことは有りません」

「問題ない、自由にやってくれ。で……、これが今回の依頼書だ。内容は、常闇の森の調査と、怪物の退治、遺跡調査、そして森に眠る宝の持ち帰りとなっている」

「宝ですか?」

 モルアールが興味津々というように身を乗り出す。

「有るかどうかなんて知らんよ。あくまでも口実だ。これを常闇の森に領地がかかるどこかの領主に見せて、許可を取ってくれ」

「自領地内の宝などと言われて、素直にハイそうですかと言ってくれるとは思えませんが?」

 腑に落ちないようで、モルアールは更に聞き返す。

「そこは、自領地を荒らす怪物を倒したとしても、報酬は頂きませんよ。懐は痛みませんよ、という意味と受け取れば良いのですか?」

 補足するようにラーソルバールが続けると、モルアールは納得したように頷いた。

「うむ。常闇の森とはいえ、自領地の一部だ。宝が有るかどうかは良く知っているだろうさ。もしそこに宝では無いにせよ、探られて困るような物が有れば拒否されるだろう。その時は隣の領主にでも了承を取って、森の中で越境でもすれば良い。森には境界線も無いんだ、知りませんでした、迷いましたで済む。」

「中々強引ですね……」

「そうか? 冒険者ってのは目的のためなら、多少の危険も犯すもんだ」

 元冒険者らしい言い草だった。

「そうでした、我々は冒険者でしたね」

 その言葉で一同は笑いに包まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ