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聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第十六章 動乱

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(二)覚悟②

 二人も仲間を倒した危険な相手を、兵士たちが見逃すはずが無かった。

 ラーソルバールが次の相手と狙った相手との間に、別の兵士が割り込んだ。

「むん!」

 兵士の剣が直線的に振り下ろされる。ラーソルバールは難なくそれを避けると、低くなった兵士の頭を剣で後ろから叩きつけつけた。

 後頭部への直撃に抗う術も無く、兵士はそのまま大きな金属音を立てて倒れ込んだ。

「ラーソルバール!」

 後ろからエラゼルの声がした。混乱した式場で人を掻き分けるようにしてやってくる。

「剣はここに有るから、拾って使って! 私は宰相様をお守りする!」

 ラーソルバールの戦いを見て、落ち着きを取り戻した数名が模擬剣を手に兵士に向かっていく。エラゼルならこの場を任せても大丈夫なはずだ。確信がある。


「アル兄! エフィ姉!」

 幼馴染の二人の名を叫ぶが、返事は無い。

 混乱の声にかき消され、互いの声が聞こえないのだろうか。心配は後だ。爆発に巻き込まれていなければ、あの二人なら大丈夫だ。自分に言い聞かせる。

 今は宰相を、軍務大臣を守らなくてはいけない。

 襲い来る兵士の剣を掻い潜り走ると、ジャハネートに守られるように避難する宰相の姿が見えた。

(あそこまでいける?)

 自問する。

 兵士はまだ二十人以上はいる。何人かは生徒達に止められているが、まだ増える可能性がある。

 待てよ、と疑問が沸いた。これだけの重装備をした兵士を街中で動かせるものか。人目につき、即座に企ては発覚し、騎士団によって制圧されるはずだ。夜間のうちに敷地内に忍び込んだか、あるいは地下道でも作ったか。

 もうひとつの可能性は考えたくない。


 三人ほどの兵士を倒し、他の兵士の間をすり抜け、ラーソルバールはようやくジャハネートの元に駆けつけた。

「ジャハネート様!」

「おお、アンタかい!」

 険しかったジャハネートの顔が晴れた。

 直接の面識は無いはずだが、と心の中でラーソルバールは思ったが、口には出さなかった。

「ドレスじゃないにしても、剣が無いと踊りにくくてね」

 素手で剣をあしらいながらも、冗談を言う余裕があるという事だ。戦闘の中、ラーソルバールは思わず笑ってしまった。

 ラーソルバールは、ジャハネートを狙って振り下ろされた兵士の剣を受け流すと、手首を捻って巧みに剣を絡め取った。

「手際いいねぇ」

 兵士の手から離れて宙を舞った剣を手に取ると、ジャハネートは嬉しそうに笑った。

「さあて、行くよ! 離れてな!」

 そう言った瞬間に、ジャハネートの剣が唸りを上げた。

 剣を失った兵士は、ジャハネートの攻撃を腹部に受けると一瞬で弾き飛ばされ、後ろの兵士を巻き込んだ。

「うわ!」

 赤い女豹と呼ばれる騎士団長の強さを目の当たりにして、ラーソルバールは驚きの声を上げた。

 正に暴風の如く、兵士をなぎ倒しながら道を切り開く。桁違いの破壊力だった。

「赤い女豹が剣を持った!」

 兵士の一人が悲鳴のような声を上げる。

「バケモノだ!」

 ジャハネートの戦う様を目の当たりにした兵士が叫ぶ。

「レディを相手にバケモノとは失礼だね! ちょっとばかし鍛え方が違うだけだよ!」

 兵士達の腰が引ける。

 ラーソルバールもジャハネートと共に、兵士の波を突き崩していく。

「ラーソルバール、相手を殺す覚悟はあるかい?」

 何故ジャハネートは自分の名前を知っているのだろう。答えよりも先に、そっちが気になった。

「今からします!」

「悪くない返事だが、殺すのは騎士になってからでいい。今は自分と、守るべき人を守るため、最大限の努力をすればいい!」

 迷っていた心を見透かしたような言葉に、ラーソルバールは「今やるべきことをやる」その事を再確認した。


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