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聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第十六章 動乱

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(二)覚悟①

(二)


 大講堂に悲鳴が飛び交い、式典は混乱状態に陥った。

 爆発があったのは前方、二年生達の居た辺り側面だ。粉塵が舞う中、悲鳴に混じって、カチャカチャという金属音が耳に入ってきた。

(何の音?)

 爆発で空いた壁の穴から、いくつもの人影が入ってくるのが見える。

「あ!!」

 粉塵の隙間から、一瞬見えたのは全身金属板鎧(フルプレートメイル)を身につけた兵士だった。

(兵士? 狙いは……?)

 ラーソルバールの脳裏に一瞬、新年会の後のイリアナの言葉がよぎった。


『今回の大臣の人事に不満を持つ幾つかの家が、この会を連帯して欠席したという事らしいのよ』


 人事に不満を持つということは、その人事に大きく関与した宰相、メッサーハイト侯爵を狙っている可能性が高い。

 国王には向けられない刃を、宰相に向ける。単純な思考ではないだろうか。だがそれをすれば、国王に弓引くも同然。行く先は国家転覆か。全身に悪寒が走り、鳥肌が立つ。


(させるものか!)

 無意識に体が動いていた。

 相手は全身鎧、こちらは制服と、礼装用に身につけた模擬剣。勝負になるはずが無い。

 宰相と軍務大臣の近くにはジャハネートがいたが、彼女は丸腰であり騎士団長とは言え、一人で相手ができるはずもない。

「ラーソル!」

 シェラの叫び声が耳に届いた。

「皆を講堂から外に誘導して!」

 ラーソルバールは大声で答える。

「分かった!」

 シェラは意図を一瞬で理解してくれた。あとは自分ができる事をすればいい。

 ラーソルバールは急いで宰相の居た辺りへと走る。

 粉塵が収まりつつある中、狼狽する学生と、宰相を探すように動く兵士の姿が見えた。

 周囲には血を流して倒れている生徒の姿も見えた。

「大事な式典にっ! 無礼にも程があるっ!」

 ラーソルバールは怒りをそのまま口にした。

 模擬剣を手に瓦礫を避けながら、視界に入った一人の兵士との距離を一気に縮める。兵士がラーソルバールの接近に気付いた時には、手に握っていた剣を弾き上げられていた。

 剣を失った事に驚いて兵士が固まった瞬間、ラーソルバールは兵士の頭部を踵で勢い良く蹴り上げた。

「いった……ぃ」

 オーガの時の要領で、足に一気に魔力を集中させたものの、さすがに鉄兜は硬かった。魔力の扱いが未熟であった事も一因ではあるが……。

 怪我はしていないが、さすがに全面装着型(フルフェイス)相手にやるものではない。


 兵士はバランスを失って、後方に倒れ込み、大きな金属音を響かせた。

 ラーソルバールは模擬剣を手放し、弾き上げた剣を空中で掴む。手にした瞬間、剣からずっしりとした感覚が伝わってきた。

(重い!)

 兵士が持っていた長剣は、制式剣と同等の重量で作られた模擬剣よりも重かった。

 それでも、模擬剣よりは戦えるはずだ。

 仲間が倒れた音に気付いた別の兵士が向きを変え、ラーソルバールに襲い掛かる。

 全身鎧を着込んでいるせいか動きは鈍い。また兵士達は盾を装備しておらず、両手で剣を握って振り回すように攻撃をしてきた。

(正式な訓練を受けた動きではない! 私兵?)

 剣を軽く受け流すと、一回転して勢いを付けて頭部に剣を叩き込む。

 ガィンッ!

 鈍い金属音がして、兵士はよろける。

 ラーソルバールのように非力な人間が、金属鎧の相手に攻撃したところで大したダメージにもならない。

 だが、頭部に強烈な一撃を叩き込めば、脳震盪を起こすことができる。今の自分にはそれが最善の方法だと理解していた。

 頭部を揺らされた兵士が片膝をつき倒れこむ間に、ラーソルバールは次の敵に照準を定めた。


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