表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第十六章 動乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/589

(一)巣立ちの声①

(一)


 年が明けてから、二ヶ月が過ぎた。

 世の中も年明け早々の騒動以降は平穏で、街の復興も進んでいた。

 騎士学校はといえば、今まで通りの座学と、今まで以上の訓練がラーソルバール達を待っていた。

 昨年末までとの違いといえば、特筆すべき事はない。強いて挙げるなら、休み時間にラーソルバールのクラスに時折エラゼルが訪れるようになった事だろうか。

 もうひとつ。二年生とは時間帯がずれるのか、ラーソルバールはアルディスらとは年始以降はほとんど会えていない。


「三日後には二年生は卒業だねえ」

 食堂でシェラがそう話を切り出した。

 周囲を見回したが、二年生の姿は無い。

「さっき見たときはまだ訓練やってたみたいだし、最後だから忙しいんだろうね。これで卒業したら半年間は見習い騎士か」

 そう言いつつ、ラーソルバールは後ろ髪をリボンで結わえた。

 入学当時は肩までしかなかった髪も、切り揃えながら伸ばし、背中の辺りまでの長さとなっていた。

 シェラは黙ってその様子を見詰める。

「ん?」

 シェラの視線に気付いたラーソルバールは、首を傾げた。

「ああ、ごめんね。何か、少しずつ騎士らしい顔つきになってきたなぁって思って」

「そんなこと分かるの?」

 ラーソルバールは苦笑した。

「何となくだよ」

 違いが分かるほど変わったのか、シェラが自分のことを観察していたから分かったのか。

 どちらにせよ、自身には分からない事だ。

「いただきますか」

 二人は手を合わせると、食事を始めた。

「明日と明後日は私達は卒業式の準備だけど、二年生は最終試験らしいよ」

「そういえばそんなのあるんだっけ」

 最終試験に合格できないと、卒業はできない。

 もう一年間、二年生をやり直しとなる。

 命を守るためには、生半可な状態で卒業させて騎士にする訳にいかないからだ。

 勿論、一年生にも試験があり、駄目ならもう一回一年生だ。

 一年生のやり直しは多くないが、二年生は多いと聞いている。騎士学校には最大四年間在籍できるが、卒業できなければ騎士にもなれず、学校を辞めて冒険者や傭兵などになって食い扶持を稼ぐことになる。

「まあ、アル兄達は大丈夫かな。優秀だし」

「卒業したら学校で会うことも無くなるから、しばらく会えなくなるね」

「うん、ちょっと寂しいな…」

 言ったままの表情で、ラーソルバールはパンをつまんで食べる。

 そこへ、代表会に行っていて遅くなったフォルテシアがやってきた。

「早かったね、お疲れ様!」

 シェラが労う。

「多分、もう一人来る」

 食事の乗ったトレーをテーブルに置いて、フォルテシアはゆっくりと腰掛ける。

「連れて来たの?」

「違う、彼女がついてきた」

 フォルテシアの言う「もう一人」はエラゼルだろう。

 何故か、フォルテシアともうまくやっているらしい。

 不器用な感じがお互い丁度いいのだろうか。ラーソルバールは不思議に思っていた。

「フォルテシアについてくれば、ラーソルと一緒になるしね」

 シェラはそれが当たり前の事のように言う。

 すると間もなく、その「もう一人が」何やら暗い顔をしてやって来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ