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聖と魔の名を持つ者~剣を手にした少女は、やがて国を守る最強の騎士となる/ラーソルバール・ミルエルシ物語~  作者: 草沢一臨
第一部 : 第十三章 思い惑う

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(四)会の終わり①

(四)


 新年会も時間が経過すると、新大臣らが会場を周り始めた。

 フェスバルハ伯爵や、ナスターク侯爵らもラーソルバール達の元を訪れ、挨拶を交わす。

 フェスバルハ伯爵は大臣に就任しても、以前と変わらぬ態度で、ラーソルバールを安心させた。

 ナスターク侯爵は訪れた際に、ラーソルバールとエラゼルが共に居るのを見ると、「善き事」と言って微笑みを浮かべた。武技大会の記憶も新しく、仲が良さそうにしていたのが嬉しかったのだろう。

 だが次の瞬間、侯爵は父・クレストの姿を見て「鷲が居る」と驚いたような表情を浮かべる。懐かしそうに歩み寄ると、二人は元騎士同士の会話を楽しそうに始めた。

「そうか、彼女はやはり鷲の娘であったか」

 最後に満足そうにラーソルバールの姿を見て笑うと、挨拶を交わし去っていった。


 ラーソルバールとしては、フェスバルハ家の人々にも挨拶をしたかったのだが、各大臣の家族の元は人が溢れており、とても近づけるような様子ではなかった。

 伯爵自身は王都の別邸に住むことになるということなので、家族も王都に来る機会が増えるだろうから、会う機会が増えるかもしれない。

 そうなると、エレノールさんはどうするのだろうか。

「どうした、考え込んで」

 エラゼルが顔を覗き込んできた。

「あー、いや、大臣になられた方も、そのご家族もお忙しそうだなと。ご領地に住んでいる方は、王都に引っ越してこなければいけないし、大変だな、と思ってね」

「ああ、そうだな。王都に住んでいたり、別邸が有る者はいいが、そうで無いと家を買わねばならんしな……。数年の任期のために散財しなければならないな」

 そう言ってエラゼルは苦笑した。

「その点、デラネトゥス家は心配ないと思うけど、大臣のお話とか無いの?」

「有っても全部断っておる。大臣に就任すれば、先ほどの話のように王都に住む事になる。そうすれば領地はどうなる?」

「代理の人に見てもらって、重要なところだけ……」

「そうだ。どうしても自らの領地を疎かにすることになる。特に我が家の領地は大きい。それが揺らいでは、国にとっての大きな損失となる場合もある。国を富ませようと大臣職で奮闘しても、それでは本末転倒なのだ」

 なるほど、とラーソルバールは納得した。公爵の人となりが良く分かる話だ。

「もう一つある」

「もう一つ?」

「父上は権力闘争とか、派閥とかそういったものがお嫌いなのだ」

 その言葉を聞いて、ラーソルバールは思わず笑ってしまった。話をしていても清々しい方のはずだ、と。

 そして、その気骨は娘にも引き継がれているのだと、エラゼルを見ていると分かる気がする。公爵が貴族としての模範を示す事で、風紀の乱れが少しは抑えられているのかもしれない。

 もしかしたら……と、ひらめいた。

「こうやって、エラゼルが居る事でゆっくり話しも出来るし、誰も寄ってこない。公爵様の威光のおかげです有り難い事です」

「人を虫除け香みたいに言うでない!」

 エラゼルは怒った素振りを見せたが、横を向いた顔は笑っていた。


 実際に有った会話は、次のようなものである。

「あの美人二人がいるところへ行こうか」

「やめておけ、あの白いドレスはデラネトゥスの娘だ」

「赤い方ならいいだろ?」

「いや、下手をして白い方を怒らせたらどうする」

「取り巻きじゃないのか?」

「あれが取り巻きに見えるか?」

 ふたりは冗談交じりに話していたが、ラーソルバールの言った通りだったと言える。

 中にはデラネトゥス家での出来事を知る者に、制止されるケースも有った。


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