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八百万  作者: マー・TY
第八章
96/115

96.勇気の話

「はぁ…はぁ……。一応、ここに隠れてよう?」


「はぁ………。上ったなぁ……」


 幽霊団地入口から2つ目の廃マンション。

 そこの804と書かれた部屋のリビングに、アオと柳は身を潜めた。

 階段を一気に駆け上がったため、アオは息絶え絶えだった。

 このマンションにはエレベーターがあったが、壊れていて動かない。


「入口手前にもうひとつあったのに、何で敢えてここにしたわけ?」


「……………すぐ見つかりそうだったから」


「あ~、なるほどね」


「友達が迎えに来てくれるって言ってたから、それまで待てればいいの。………多分」


 こうは言ったものの、アオは最初、入口手前の廃マンションに入ろうと考えた。

 しかしそこは、以前小田に追い回された時に隠れた場所だった。

 その際はなんとか逃げ切れたものの、それ以来小田は行方不明になっている。

 そのためアオは入口手前の廃マンションに入るのを恐れ、今居るマンションを選んだのだった。


「君の友達ってさぁ、あの狐野郎に勝てる奴なの?」


「……解らないけど、信頼できる」


「へー。……ていうか、あの狐野郎何者だよ。なんであんなのに狙われないといけないんだ?」


「…………赤狐」


「は?」


「あの人は、赤狐っていう殺人鬼。悪い人を狙うんだって」


「赤狐……?………あ~、あいつが?あの噂の殺人鬼?」


 柳は赤狐の存在を知っていた。

 単なる噂話だと思っていたようだが、こうして追われるとは思っていなかったらしい。


「ついに俺の悪行もバレたって感じか~」


 柳は苦笑して頭を掻いた。

 こんな状況でも態度は軽い。


「悪いこと、してるの……?」


「まぁ、主に俺がアオちゃんにやったようなことを……ね」


 柳はケラケラと嗤いながら、アオの肩に触れた。

 アオは体をビクつかせ、カタカタと震え出した。

 柳にされたことが映像化し、脳内を埋め尽くしていく。

 アオ自身、できれば今からでもここから逃げ出したかった。


「やっぱ怖がってるアオちゃん可愛いなぁ。ねぇ、何で俺を助けるの?アオちゃんって俺には恨みしかないと思うんだけど。……あっ、そっか。俺が殺されるところを間近で見たいんでしょ?ねぇ?」


 柳はアオの肩に手を回し、顔を近づけた。

 アオは柳から顔を逸らす。


「別に構わないけどね~。でもさぁ、ただ死ぬのはちょっとな~。だからさぁ、記念に一発ヤらせてくれない?そしたら俺殺害ショーを見ててもいいよ~?」


 軽いノリで、自分が殺される光景を見ても良いと言う柳。

 アオはそんな柳の腕を振り払い、距離を取った。

 呼吸を荒くし、胸を抑えている。

 それでも柳は、アオを嗤う。


「いや~、トラウマってそんな感じなんだね~。ほらほら、俺といてそんなに苦しいんだからさぁ、庇う必要なんかないじゃん?」


「………そういうことじゃ、ないの」


 アオは小さな声で、柳に反論した。


「正直なことを言えば、私は、………柳君達と逢いたいなんて思ってない。……逢いたくなかった。でも、死んでほしいとも思えないんだ………」


「………」


「私、人が傷つくところ見るのは嫌。それ以上に、人が死ぬところは見たくない。……だから、…私は弱いかもしれないけど、助けたいの!……それが柳君でも」


「……フ~ン」


 柳はつまらなさそうに、窓から外を見た。

 もうすぐ日が沈もうとしている。


「アオちゃんはさぁ、優しいところだけは変わらないよね。そんなノリだとつまらね~。やっぱ泣いてる方が似合うよアオちゃん」


「泣きたくない……」


「はっきり言うようにもなったなぁ……。俺らに対していろいろ溜まってんじゃないの?悪口とか言ってもバチ当たらないでしょ」


「悪口も何か、嫌」


「ホント相変わらずだな~」


 アオと柳は、顔を合わせずに会話をする。

 お互いその方がやりやすかった。

 ふとアオはスマホを機動させた。

 LINEでのシロとのやり取りを、ボーッと眺める。

 シロの顔を見て安心したかった。


“ガチャッ”


 玄関のドアが開かれる音がした。

 アオと柳は、反射的に入口がある方に注目した。

 

“ギシ……ギシ………”


 不気味な音が響き渡る。

 アオは柳の前に立った。

 

「やっと見つけた」


 廊下を通り過ぎ、リビングに入ってきたのは、案の定赤狐だった。

 アオと赤狐は、互いに向かい合う。


「どいてよ」


「嫌だ」


 緊張のためか、アオの表情は固くなっていた。

 赤狐はアオを殺すことはできない。

 ひとまずナイフとアイスピックをポケットの中に備え、様子を伺うことにした。


「一緒に居て解ったと思うんだけど、そいつは生きてちゃいけない奴だ。殺さないとダメなんだ。だからどいて」


「殺しちゃダメ……」


「そいつは何人もの女の子を傷つけた。生かしておいたら、今後も傷つく娘が増える。殺す」


「ダメだよ……」


「どけ!!」


「嫌だ!!!」


 怒鳴る赤狐に対し、アオはそれ以上の声で返せたことに内心驚く。

 赤狐も苛立っているようだ。


「君だってそいつに傷つけられた筈だ!調べて解った!そいつのこと憎いだろ!?」


「……憎いよ。でも殺すのはダメ。殺しても、何の解決にもならないよ。それに、私はあなたにもう人を殺してほしくない」


「僕に人を殺してほしくない?……何でそう思えるんだよ……」


「………悲しんでる人がいるから」


 アオはシオンの顔を思い返した。

 あの日赤狐について話すシオンは、どこか悲し気な表情を浮かべていた。


「綺麗事か。もういい。ごめんねアオさん」


 埒があかないと判断した赤狐は、アオを無力化させてから柳を殺すことにした。

 早速アオの腹に一撃入れようとする。

 しかしある男の声が、それを阻んだ。

 

「アオ!ここか!!?」


 玄関のドアが勢いよく開かれる。

 戸惑うことなく部屋に入ってきたのはシロだった。

シロと赤狐、再び……。

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