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八百万  作者: マー・TY
第八章
95/115

95.再来する話

(アオ遅ぇなぁ……)


 シロはベッドに寝っ転がり、スマホを眺めていた。

 アオが見舞いに来ると連絡を入れてきたが、到着予定時間はとっくに過ぎている。

 今まで一緒に過ごしてきて知ったが、アオは時間を守らないタイプではない。

 それどころか、約束の30分以上前にはすでに居たりする。

 この日も予定の時間を連絡してきたのだが、アオはシロの家にいない。

 シロは微かに胸騒ぎを覚えていた。


(真面目なあいつに限って寄り道なんかはしねぇだろうし。……何かに巻き込まれてねぇよな?)


 心配になったシロは、アオに電話を掛けることにした。

 アオの電話番号を選択し、『通話』を押す。

 出ないのではないかと考えたがそんなことはなく、4コール程してからアオは電話に出た。


『もしもし、シロ君!?』


 アオの焦ったような声が聞こえてくる。

 息遣いも荒く、走っていることが解る。

 どうやら電話どころではないらしい。


「アオ、お前今何やってんだ?」


『逃げてる!』


「はァ!?」


 危ない目に巻き込まれていることは予想していたが、こうはっきり言われると驚くものだ。


「おい!逃げてるってどういうことだ!?」


『どういうことって……文字通りだよ!』


「わりぃ、訊き方が悪かった!何から逃げてんだ!?」


『赤い狐の仮面を付けた人……そう、赤狐って呼ばれてる……!シロ君が捜してる人……だと思う!』


「なっ…………!?」


 シロには信じられなかった。

 アオが言っているのは、シロが昨日の夜に逢った者と同一人物に違いない。

 その時、逢ったからこそ解ったことがある。

 赤狐は悪人しか殺さない。

 そんな赤狐に、現在アオが追われている。

 

「アオ、お前何かやったのか?」


『何かって!?』


「そいつは、悪人しか狙わねェ!!お前何か悪いことでもしたのか!?」


『何もしてないよ!』


『うわぁ!!』


 電話越しに、聞いたことのない男の声が聞こえてきた。

 突然のことに、シロは一瞬驚く。

 どうやらアオは、一人ではないらしい。




 アオは息を切らし、シロと電話をしながら走っている。

 背後から赤狐が迫ってくる。

 しばらく姿が見えなかったが、急に現れて追ってきていた。

 

『アオ、お前一人じゃねぇのか!?』


「……うん、……中学校の時の、同級生が……」


『中学の……?そういうことかよ……』


 シロは状況を察した。

 アオは中学時代、自身がいじめられていたことをシロに教えている。

 無論、赤狐の狙いは柳だ。


(!!……この道って………)


 赤狐と電話越しのシロに夢中で気づいていなかったが、アオは自身が走っている道に見覚えがあった。

 この道を走ったことがある。

 それは柳と同じ、中学時代の元クラスメイトである小田に追われた時だった。

 その後小田がどうなったのかは未だに解っていないが、小田を撒いた場所はすぐそこだった。


「柳君こっち!」


「はっ!?」


 アオは真っ直ぐ走っていこうとする柳の手を引っ張る。

 そして古びた門を通り、荒廃した建物を目指す。

 アオと柳が入ったその場所の名は、幽霊団地。

 この街に見棄てられた、古いマンション等が建ち並ぶ区域。

 アオにとっては、二度と来たくない場所のひとつだった。




 アオと柳を追い、赤狐も幽霊団地に入る。

 割れ目から雑草が飛び出すアスファルト。

 錆びた廃車。

 不法投棄されたであろう家電類。

 表面にひびが入り、すっかりボロボロになった建物。

 団地内は、赤狐がいつも見ている景色とは大きく異なっていた。


「どこ行った……?」


 赤狐は周囲を見渡す。

 アオと柳の姿はどこにもない。


「………ひとまず片っ端から捜すしかないか。2時間程度で見つからなかったら出直そう」


 捜索中に団地内から逃げられる可能性がある。

 赤狐は限界を決め、まず大型のマンションに視線を向けた。


「!!」


 突如として赤狐は、背後から殺気を感じ取った。

 それに対応し、赤狐は身を屈めて躱す。

 頭上を小さな黒い影が通り抜けていった。

 それは近くの木の枝に止まって、赤狐を見下ろす。


「………なんだ。カラスか」


 カラスは「ガァ」と一声鳴き、建物の方へと飛んでいった。

 周囲をよく見ると、ほとんどの木や建物の上に留まっている。

 

「ここ、カラス達の縄張りになってるみたいだな……」


 赤狐は先程から隠していたナイフとアイスピックを取り出した。

 凶器を見て警戒したのか、これ以降カラスが襲ってくることはなかった。

 

「これでカラスにも気にせず捜索できる」


 たくさんのカラスが見張る中で、赤狐はマンション内に入っていった。




 シロは通話をしながら、既に玄関を出ていた。

 焦る気持ちがあったが、それを抑えて冷静にアオと会話をする。


「おい、話できそうか?」


『うん、なんとか……』


 見つからないようにするためか、アオは小声で話す。

 

「迎えに行く。お前今どこにいるんだ?」


『幽霊団地。そこの入口から2つ目の古いマンションの最上階を目指してるところ』


「幽霊団地?……あぁ、あそこか。すぐ行くから待ってろ。切るぞ」


『うん、また後でね』


 シロはアオとの通話を終了させ、スマホをポケットに仕舞い、走り出した。


(アオも……あの狐野郎も……今度こそ!!!)


 今度こそアオを無事に助け出す。

 今度こそ赤狐による制裁を止める。

 この2つの目的のため、シロは幽霊団地を目指した。

場面の切り替えって大変…。

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