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八百万  作者: マー・TY
第八章
92/115

92.赦せない話

 シロがいじめっ子達を返り討ちにして2週間。

 その間、いじめっ子達が一、二度喧嘩を売ってきたが、シロは難なく追い返せるようになっていた。

 それからシロは嫌がらせ等を受けることはなくなった。

 いじめっ子達も、今は大人しい。

 以前と比べれば、クラスの空気は平和になっていた。

 シロがいれば、これからもこの雰囲気は続くだろう。

 レオンがそう思っていた矢先、事件は起きた。


“ドッ!”


 鈍い音が聞こえた。

 シロが転校初日に救った、気が弱い女子。

 その女子が、シロを階段から突き落としたのだ。

 レオンはたまたま廊下を歩いていた時にその瞬間を目の当たりにした。


「なっ…何してるんだよ…………」

 

 レオンは訳も解らず、その女子に理由を聞こうとした。


「ご、ごめんなさい……!」


 気弱な女子はそれだけ言い残し、その場から逃げ出した。

 レオンは階段の下の方に目を向けた。

 シロが痛そうに頭を抑えている。

 生きていることにひとまず胸を撫で下ろし、レオンは急いで階段を駆け下りた。


「シロ君、平気?」


「いって~~~……。ンだよいったい……」


 シロは片手で頭を擦りながら、ゆっくり起ち上がった。

 階段から落ちても立っていられる頑丈さに関心する。

 レオンはひとまず、シロに突き落とした犯人を教えた。


「あいつか……」


「うん。君には恩しかないはずなのに、それを仇で返すなんてね。どうするの?謝らせる?」


「いや、いい」


「は?」


「あいつは悪くねーよ。どうせ誰かに命令されてやったんだろ。あいつに自分からこういうことする度胸があるなんて思えねーからな」


 シロは階段を見上げながらそう言った。

 しかしレオンは納得いかなかった。

 シロの言うことが本当だとしても、あの女子が突き落としたのには変わりない。

 何のお咎めもなしなんてことでいいものなのだろうか。

 そうこう考えているうちに、シロは階段を上がっていた。


「シロ君どこ行くの?保健室だったら下だよ?」


「俺を突き落とすように仕向けた奴のところに行く」


 レオンに背を向けて階段を上がるシロの声には、怒りが混じっていた。




 その後シロはあの気弱な女子を見つけ出し、話を聞いた。

 その女子にシロを突き落とすように言ったのは、6年生の男子達なのだという。

 いじめや暴力が横行しているこの小学校では、実質6年生が一番強い。

 そのため下級生の中には、6年生に気に入られようとする者も少なくなかった。

 シロ達のクラスのいじめっ子達は6年生の手下のような存在で、彼らにシロについての不満を漏らした。

 それを聞いた6年生は、気弱な女子にシロを階段から突き落とすように命令したということだった。

 現在シロは6年生のクラスを目指して進んでいる。

 レオンも着いてきていた。


「不満があンなら直接来いよ……。ふざけやがって……!あ~うぜぇ……!!」


 シロは先程から何やらブツブツ呟いている。

 2人は首謀者の6年生がいるという教室に到着した。

 シロは早速その教室に乗り込んだ。


「おい!!…………あ?」


 シロは立ち止まった。

 その教室の後方で、一人の女子が複数の男子にボロボロにされていた。

 足元には、割れた眼鏡が落ちている。

 この光景を見て驚いたのは、シロよりもレオンだった。


「姉さん…………!?」


 6年生の男子達にボロボロにされていたのは、レオンの姉であるシオンだった。

 ほうきやモップを押しつけられて、顔も服も汚れてしまっている。


「レオン……?どうして来たの…?」


「それは、その………」


 レオンは戸惑っていた。

 そんなレオンの前にシロが立つ。

 

「お前らさぁ、女の子に手ぇ出したらいけねぇって母ちゃんから習わなかったのかよ?」


「うるせぇなぁ!下級生のくせにエラそうなこと言ってんなよお前!!」


 一番体格がいい男子が前に出てきて、シロの前に立ち塞がった。

 彼の背はシロより高かったが、シロは物怖じなんてしていなかった。


「おっ、マサル君、そいつやっちゃう?」


「年下がイキがってんなよw」


 彼はマサルと呼ばれており、彼らのリーダー格のようだ。

 取り巻きのような生徒達が騒いでいる。


「その人、何かやったのか?」


「別に。ただおもしれぇからやってんだよ!コイツいっつも本ばっか読んでて気持ちわりぃから遊んでんだよ!」


 その言葉にレオンは目を見開いた。

 彼らはおもしろいからというだけで人を傷つけている。

 現に今、自分の姉がおもちゃ感覚で傷つけられている。

 それについて、レオンの中で怒りが一気に込み上げてきた。

 

「で、お前ら俺らに何か用かよ?」


「本来の用じゃねーけど、その人に乱暴するのやめろ」


「年下が命令なんてしてんじゃねぇぞ!!」


 シロとマサルは、お互いに睨み合っていた。

 今にも殴り合いが始まりそうな状況。

 そんな中で動いたのは、レオンだった。


「ッ!!!!!」


 突然レオンが体当たりをし、マサルを突き倒した。

 その場にいる全員が唖然とする中、レオンは近くにいた取り巻きの一人からモップを奪い取った。

 それからレオンはモップを、マサル目掛けて力一杯振り下ろした。


「う”あ”っ!!!」


 一同は顔を青ざめた。

 モップの金属の部分がマサルの頭に命中した。

 マサルは痛そうに頭を抑える。

 頭皮が切れたのか、血が床に零れていた。

 それでもレオンは手を止めることなく、モップで何度もマサルを殴り続けた。


「おいやめろ!!!」


 我に返ったシロが、レオンからモップを取り上げた。

 しかしレオンの怒りは治まらない。

 今度はマサルに馬乗りになり、両拳で殴り始めた。


「レオン!!やめて!!!」


 シオンの止める声も届かない。

 その後レオンは教師が来るまで、シロに取り押さえられた状態だった。

 とはいえレオン自身、この後の記憶は無かった。

シロを突き落とした娘、あんまり責められないかもです。

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