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八百万  作者: マー・TY
第八章
90/115

90.真っ直ぐな話

「はぁ………」


 レオンは自分の席で頬杖を付いていた。

 カイやショウ等のクラスメイトがふざけ合っている様子を見て、ふと溜息をが出る。


(ついに見られちゃったなぁ……)


 レオンは赤い狐の仮面を付け、理不尽に人を不幸にする者達を殺して回っている。

 “赤狐”と呼ばれるのも、もう慣れていた。

 しかし昨日仕方がないとはいえ、人を殺す瞬間をシロに見られてしまった。

 レオンにとってシロは、一番殺人を見られたくない相手だった。

 

(シロ君……。君は止めに来るんだろうなぁ……)


 レオンは机に突っ伏した。

 頭の中で、シロに出会ってからの日を思い返していた。




 レオンが小学4生だった頃まで遡る。

 今は幾分かマシになってはいるが、当時レオンが通っていた小学校は荒れていた。

 学級崩壊が頻繁に起こり、時には生徒が教師を泣かせるなんてこともよくあった。

 生徒内では上下関係があり、その決め手は暴力。

 そのため、力の強い者がクラスを支配していた。

 その中で、レオンは比較的目立たない位置にいた。

 どこか不気味さがあったせいか、標的にされなかったのだろう。

 

(野蛮だなぁ……) 


 暴力やいじめを頻繁に行っているクラスメイト達を、冷めた目で見ていた。

 支配されている弱い立場の者達を可哀想に思う気持ちはあったが、巻き込まれたくはなかった。

 どうしても今の立場は維持していたかった。

 そんな日々を送っていたある日、彼はやってきた。

 ある日の朝、担任からの紹介があった。


「今日からこのクラスの一員になる、冬庭志路君です。シロ君、あいさつして?」


「……冬庭志路です。よろしく」


 シロはクラスメイト達に、ぶっきらぼうに挨拶をした。

 担任に言われ、シロは一番後ろの空いた席に座った。

 またいじめっ子が増える。

 目つきの悪いシロを見て、当初レオンはそう思っていた。




 休み時間、シロはいじめっ子達から何やら誘いを受けていた。

 シロは最初首を傾げていたが、なんとなくといった様子で乗っていた。


(やっぱりあいつもあっち側なんだ)


 思った通りというように、レオンは視線を逸らした。

 いじめっ子達は、よく標的にしている気が弱い女子に水を掛け、さらにバケツを被せた。

 それから、バケツの上からほうきの柄で殴ったり、体を蹴ったりし始めた。

 この教室でよく見る光景のひとつだ。

 いじめっ子達は自身達が行っていることをシロに見せて嗤っている。

 彼らにとって、これは鬼ごっこやかくれんぼと同じだ。

 シロもこれに加わるのだろう。

 レオンはそう思い込んでいた。

 しかし、それは間違いだった。


「大丈夫か?痛ぇし怖かったよな……」


 その声にレオンは反応した。

 見るとシロがバケツの取り、すすり泣く女子を慰めていた。

 転校生というだけあって、事情が解らないのだろう。

 とはいえレオンにとって、これは想像できないことだった。


「おいお前何やってんだよ!」


「転校生だからって調子乗ってんのか!?」


 いじめっ子達はシロを非難する。


「保健室行くか?」


 シロはそんなことお構いなしといった様子で、女子の介抱を続ける。


「無視してんじゃねぇよ!」


 いじめっ子の一人がシロの頭をほうきで殴る。

 シロはすぐさま振り返り、いじめっ子達を睨みつけた。


「何だよ!お前が寂しそうだったから、友達にしてやろうと思ったのによぉ!」


「こういうことするなら、友達なんていらねぇよ」


「調子乗んな!」


「後悔すんなよw」


「はいフルボッコw」


 いじめっ子達はシロに襲い掛かった。

 シロも応戦する。

 シロは何度殴られても怯むことなく、いじめっ子達に向かっていく。

 しかし、多勢に無勢。

 休み時間が終わった頃には、シロは床に倒れていた。

 

「コイツよっわww」


「お前今日から標的なw」


 いじめっ子達は嗤いながらそう言い残し、自分の席に座っていった。

 シロはゆっくり起き上がると、まだ床に座ってすすり泣いている女子を立たせた。

 教室に入ってきた担任は驚く。


「冬庭君どうしたの!?」


「先生、保健室どこ?コイツ連れていきたいんだ」


 シロと女子は、担任に連れられて保健室に向かった。

 一部始終を見ていたレオンは、しばらく教室の入り口を眺めていた。




 それからシロは、いじめっ子達の標的となった。

 いきなり殴られたり蹴られたり、物を投げつけられたりすることがよくあった。

 それでもシロはやられっぱなしではなかった。

 相手が多数にも関わらず、たった一人で喧嘩を買っていた。

 そしてその度にボロボロにされていた。

 レオンはそんなシロのことを、ずっと観察していた。

 ある時レオンは、喧嘩に負けたシロに話しかけた。


「シロ君ってさぁ、あいつらに付こうとか考えないの?そうすれば嫌がらせとか暴力受けずに済むと思うけど」


 ほとんど暴力が支配しているといっても過言ではないこの小学校では、弱い生徒は強い生徒の子分になるということは珍しくなかった。

 弱くても、それなりに威張ることができるのだ。

 そういう意味では、子分になるという方法はこの学校で生き抜く上で賢いやり方と言える。

 しかし、シロはそのやり方に従おうとはしなかった。


「あいつらに従うなんて嫌だ。俺はただ、自分が正しいと思えるようにしたい。それだけだ」


 レオンを見つめるシロの目は真っ直ぐだった。

 シロのそんな顔を見て、レオンの心は少し動いた。

シロみたいな生き方に正直憧れる今日この頃。

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