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八百万  作者: マー・TY
第八章
89/115

89.心配な話

「だぁ~~~~~!!!終わった~~~!!!」


 午前7時、隠神警察署。

 シロはドカッと待合室の椅子に座り、気怠げに叫んだ。

 あの後シロは少年を放っておけず、警察に電話した。

 それから事情聴取のためにこの警察署に連れて来られた。

 シロが思っていた以上に長引き、結局一睡もすることなく朝を迎えた。

 

「シロ、お疲れ様」


 シロの母親であるナギが、シロを気遣う。

 当然警察から連絡が着たため、職場から抜けて署に来ていた。

 彼女はシロの事情聴取が終わるまで、ずっと待合室で待っていた。

 

「母ちゃん、帰ってても良かったんだぜ?」


「馬鹿!帰れるわけないでしょう!アンタが警察にいるって聞いて心配したんだから!」


「わりぃ……」


 申し訳なさそうに下を向く我が子を見て、ナギは溜息を吐いた。


「アンタ、よく夜の街を歩いているんだって?……そうよね。ひとりぼっちだと、やっぱり寂しいわよね。あたしが家に居た方がいい?」


「いや、そんなことねぇよ。俺が生活できてるの、母ちゃんのお陰だからな。……やっぱ俺もバイトするか………」


「気にしなくていいの!アンタはアンタで勉強頑張ったらいいから」


 ナギはそう言い、シロの頭をガシガシと撫でた。

 

「取り調べで疲れたでしょう?今日はもう学校休みなさい。あたしが連絡入れとくから」


「そうする……」


 ナギは早速スマホで学校に電話を掛けた。

 その様子を見て、シロもスマホを起動させた。


(アオにメッセージ送っとくか)


 シロはLINEを利用し、アオに今日は学校を休むという旨のメッセージを送った。


「……………」


 先程からシロは、赤狐のことばかりを意識している。

 シロにとって、アオは信頼できる相手だ。

 だからこそ、追加で次のようなメッセージを送った。


『狐の仮面付けた男を見たら連絡してくれ』




 隠神高校の昼休み。

 アオは図書室でスマホを眺めていた。

 LINEで送られてきたシロからの2つのメッセージ。

 一つはシロが今日学校を休むという内容。

 そしてもう一つは、狐の仮面を付けた男を見たら教えてほしいという内容だった。


(狐の仮面……付けた男…………)


 これに関してアオには、心当たりしかない。

 赤い狐の仮面を付けた男を2回も見ている。

 そして彼が殺人鬼であることも知っていた。


(あの人のこと……かな?どうしてシロ君はこんなこと……。危ないこと、考えてないよね?)


 アオはシロの力になりたいと考えているが、これはおそらく危険なことだ。

 例え狐の仮面を目撃しても、秘密にしておくことにした。

 アオはスマホを切り、一息吐いた。

 その束の間………。


「ボーイフレンドからのメッセージね」


「びゃっ!!」


 突然背後から話しかけられ、アオは仰天した。

 黒縁眼鏡に黒髪ロング、冬用の制服の少女が悪戯っぽく笑っている。

 

「シ……シオンさん。……それ、慣れませんよ。……変な声出ちゃいました……」


「フフフ。良い反応。やっぱりあなた可愛いわ」


 シオンは図書室に住み着いている霊だ。

 訳あって成仏せずに残っている。

 この世に留まる力を補給するため、時々アオに怪談を持ってきてもらっている。

 現在アオとシオンがいるのは、図書室の奥にある本棚。

 アオがスマホを見ていたのは、シオンを呼んでもすぐに出てこなかったからだ。

 

「改めまして、シオンさん。怖い話、集めてきました」


 アオはノートをシオンに差し出した。

 このノートには、アオが集めた怪談が記載されている。

 

「ありがとう。ゆっくり読ませてもらうわね。……ところで、あなたのLINEのことだけど………」

 

「……あぁ、シロ君………いえ、友達からの……。もしかして、見てました?」


「覗き見ちゃったわ。……あなたの友達、赤狐を捜しているようね」


「知ってるんですか?」


「えぇ」


 シオンは微笑んでいるものの、その表情はどこか暗い。

 少し間を置き、口を開いた。


「赤狐はね、私の弟よ」


「えっ!?」


 衝撃の事実に、アオは再び驚いた。

 シオンは赤狐について、自身の死の経緯も踏まえて語りだした。


「私ね、いじめられてたの。それが耐えられずに、自ら命を絶っちゃった。でも、やっぱり後悔とかあったのかな。しばらくこの世に留まれてた。家に帰ったりしたわ。家族は私のこと見えてなかったけどね」


「…………」


「弟は私を自殺に追い込んだ子達を赦せなかったみたい。それで、その子達を殺しちゃったの」


「………!!」

 

「それで留まってくれれば良かった。だけどあの子は、今も人殺しを続けてる。赤い狐の仮面で顔を隠して、悪人だけを狙ってね………」


「………そうだったんですか」


 アオはシオンがこの世に留まり続ける理由を知った。

 殺人鬼となった弟を、放っておけないのだ。

 シオンは優しく微笑み、アオの頭を撫でた。

 

「聞いてくれてありがとうね。誰かに打ち解けたかったの。……でも、気にすることないわ。これは私達の問題だから。ほら、そろそろ5限目始まるんでしょう?また会いましょう」


 シオンはアオに小さく手を振り、ゆっくりと消えていった。

 

「シオンさん………」


 本当に気にしなくていいものなのか。

 シロのこともあり、アオの心配事が増えた。

シロのお母さん、いつか描きたいな。

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