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八百万  作者: マー・TY
第七章
85/115

85.追い込まれる話

 アオは怪人と向かい合う。

 毛が一本も生えていない傷だらけの顔に埋め込まれた、血走った目。

 耳元近くまで裂けた口。

 黒ずくめの屈強な体。

 改めて見てみれば、恐ろしい姿をしている。

 一人で軽トラックをひっくり返す程の力を持っていることが解り、油断できたものではない。


(住宅街に戻ろう。休憩したから走れる……!)


 アオは船着き場からの出口に目を向けた。

 その瞬間、怪人が動いた。


「!?」


 怪人はアオに、一気に迫った。

 突進して吹き飛ばすつもりのようだ。

 アオは間一髪、怪人の突進を避けた。

 その際、また転んでしまう。


「は…速い……」


 怪人はブレーキを掛けて止まると、アオの方をゆっくり振り向いた。

 ちょこまかと動かれるのが気に食わないのか、不機嫌そうに顔を歪める。

 怪人が向き直った時、アオは慌てて立ち上がった。

 再び突進が始まった。

 

「ッ!!」


 怪人が行き着く前に、アオは走り出した。

 

(何度も避けられない。今のうちにここから抜け出さないと!!)


 怪人は突進する際、急激に加速する。

 しかしその分、すぐには止まることができない。

 そのため、入り組んだ住宅街に逃げ込めば有利になると、アオは考えた。

 

(もう少し!もう少し!!)


 もう少しで、住宅街に戻れる。

 そう思いながら走っていた矢先、アオの背中に強い衝撃が走った。

 

「えっ──────」


 何が起こったのか解らないまま、アオは走っていた方向に吹き飛ばされた。

 固い地面の上に叩きつけられ、うつ伏せの状態で倒れた。

 

「ッ!!」


 起き上がろうとしたが、全身に痛みが走り、上手くいかない。


“ヒタ…ヒタ…ヒタ”


 背後からゆっくりと、足音が聞こえてきた。

 うつ伏せで倒れているアオを、怪人がニタリと嗤いながら見下ろしていた。

 

(そっか……。私、この人に吹き飛ばされたんだ……。真っ直ぐじゃ勝てないのに…。焦りすぎたんだ………)


 アオは正常な判断ができなかったことを悔やむ。

 怪人は右手を伸ばし、アオの長い髪を掴んだ。

 そしてそのまま引っ張り、アオを無理矢理立たせた。

 右膝からは血が伝っている。

 

「やめて!痛い!」


 アオは頭皮からの痛みと、自分の首が引っこ抜かれるかもしれないという悪い予感に震える。

 怪人は掴んでいた手を髪の毛から顔部分に移した。

 顔面が潰されそうな感覚でパニックになり、アオは怪人の手を引き剥がそうと必死になって暴れた。

 怪人はその様子を見ながらケタケタと嗤う。

 それからアオの顔面を掴んだまま、後頭部から地面に叩きつけた。

 怪人は愉快そうに手を離す。

 仰向けにされたアオの目には、ぼんやりと怪人の嗤った顔が映った。

 

(……私なんか、簡単に……殺せるはずなのに……。……きっと……、楽しんでるんだ。………この人の顔、嫌だ……)


 アオは自然と、怪人の顔を過去に自身をいじめていた者達の顔と重ね合わせていた。

 

「痛いのは……もう、嫌……」


 アオの頬を涙が伝う。

 その表情を待っていたとでもいうように、怪人は笑い声を上げた。

 さらに泣き声を聞きたいのか、今度はアオの腹部を踏みつけた。


「う”あ”っ────!!」


 今まで味わったことがない程の重圧が腹部に掛かる。

 呼吸が上手くできないうえに、怪人は足を動かしてさらにアオの腹を圧迫していく。

 アオは声を出せず、体も自由に動かすことができない。

 

(私、このままこうやって、……ゆっくり殺されちゃうのかな………?でも、リリちゃんを守れて……良かったかも……)


 だんだん視界が薄れていく中で、アオはそんなことを考えていた。

 次に目が覚めた時、自分はどうなっているのか。

 いつの間にか、ぼんやりとそう想うようにもなっていた。

 

(でも………死ぬのは、恐いなぁ………)


 アオの意識は、そのまま暗闇に沈んでいった。

 動かなくなったアオの体を、怪人は持ち上げる。

 とどめを刺さない辺り、まだ遊び足りないようだ。

 気に入ったおもちゃを見つけて、機嫌良くしている。

 そんな怪人の機嫌を一気に悪化させることが起きた。


“ドスッ”


 どこからか飛んできたアイスピックが、怪人の右耳に突き刺さった。


“ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア────────!!!!!”


 怪人の悲鳴が船着き場に響き渡る。

 右耳から血がドクドクと溢れ出す。

 どんなに体が屈強でも、内部は人並みのようだ。

 アイスピックを抜き、右耳を抑え、怪人はアイスピックが飛んできた方向を睨んだ。

 住宅街の方から歩いてきたのは、赤狐だった。

 

“ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!”


 怪人はアオを投げ捨てて襲い掛かった。

 それに対し、赤狐は冷静に怪人の動きを見て躱し、船着き場に入った。

 ボロボロになり、気を失っているアオを横目に見る。


(怖かっただろうなぁ………。君みたいな娘が、こんな理不尽な奴に痛みつけられて良いわけないんだ)


 赤狐は右手にナイフを持ち、怪人に突き出した。


「殺してやる。お前みたいなのを殺すために、僕は来たんだ」

赤狐参上!

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