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八百万  作者: マー・TY
第七章
82/115

82.赤い話

 シロの見舞いから翌日。

 アオ達が通う隠神高校では、全部活動休止の知らせが出された。

 昨日も人が二名、無惨な姿で発見されたという事件が報道された。

 同様な事件は以前からもあり、警察も動き出している。

 犯人の手掛かりは未だに掴めていないが、いずれの犯行も夜間に行われているという。

 生徒のことより学業第一の隠神高校は休校にはしなかったものの、部活動休止という体制を取った。




 放課後。

 部活動が休止になり、やることもないリリは、なんとなく図書室にやってきた。

 このまま帰っても良かったのだが、まだ明るいとはいえその帰路にリリは恐怖を感じていた。

 最近怪人に追われ続けているせいか、いつ襲われるのかという不安に駆られていた。

 気分転換できる時間が欲しかった。


「やぁ、リリちゃん♪」


「クロ、お前図書委員だったっけ?」


 図書室の受付に座っていたクロがリリに挨拶をした。

 クロはリリと同じクラスに所属している。

 

「剣道部、お休みになっちゃったね。君の華麗な剣技を見られないなんて、残念だよ」


「う、うるさいなぁ!」


「照れる君も可愛いよ☆」


「死ね!」


「ひどいなぁ~」


 そう言いつつも、クロは全く傷ついていない。

 リリのクロへの印象は、顔が良いだけのキザといったところだ。

 ふと図書室を見回す。

 今のところここには自分とクロ、そして知らない女子生徒の3人しかいない。

 その女子生徒は、浮かない顔をして本を読んでいた。


「あの娘が気になる?あの娘はアオちゃんっていうんだ。僕らと同級生だよ。とっても良い娘なんだ。良かったら仲良くしてあげてね♪」


「あ、あぁ………」


 話しかけようにも、本に集中しているところを邪魔するのは気が引ける。

 リリは自由に回ることにした。

 新聞が置いてあったので、手に取ってみる。

 読むと最近の隠神市で起こっている残虐な事件が掲載されていた。

 あの怪人のことを思い出してしまい、リリはすぐに新聞を元の場所に戻した。

 

「新聞は読む気起きない………」


 リリは次に、小説のコーナーに入った。

 冒険、恋愛、推理。

 ジャンルは様々だったが、リリの目に止まったのはホラーだった。


「今の私の状況って、まさにホラーじゃないか?」


 帰宅中に正体不明の恐ろしい怪人に追われる日々。

 ホラーと言えば、リリにとってそれは怪人のことが初めてではなかった。




 これはリリが小学生の頃に体験した出来事。

 クラスに赤いワンピースを着た女の子がいた。

 深く綺麗な真紅のワンピース。

 それは他の赤い服とは比べものにならないくらいに美しかった。

 リリは今でこそ剣道等のスポーツに夢中になっているが、この頃は女の子らしくお洒落にも興味があった。

 ある時リリは、ワンピースについてその女の子に聞いてみた。


「そのワンピース、よく着てるよね。どこで売ってるの?それとも手作り?」


「う~ん………知りたい?」


「うん!」


「わかった。放課後私の家に来てよ。特別だよ?」


「やったー!」


 リリはとてもワクワクした気分になった。

 そして放課後、リリは女の子の家に連れてきてもらった。

 その女の子の家はとても大きく、まさにお屋敷といった印象だった。


「すご~い!大きい!」


「ありがとう!さぁ、入って入って!」


「お、お邪魔します」


 玄関前にはシャンデリアが吊り下げられている。

 外見通り、家の中はとても広かった。

 しかし、人の気配はしない。


「私の部屋はこっちだよ~。来て来て~」


「うん!」


 リリは促されるがまま、女の子の自室に入った。

 薄ピンクの壁紙に、ベッドや勉強机に本棚、クローゼットにフワフワのカーペット。

 可愛らしい部屋だったが、それとは不釣り合いの銀色のたらいが置いてあった。

 リリはその光景を不思議に思った。

 女の子はクローゼットから何かを取り出すと、リリに説明を始めた。


「それじゃあこのワンピースについて話すね。まず白いワンピースを用意するの」


「え?どうして?」


「これから染めるから」


「染めるって、そのたらいで?中に何も入ってないよ?」


「今から材料揃えるの。ということで、まず……」


“ドスッ”


 刺すような音が響き、リリは突然右腕に激痛が走った。

 見るとカッターナイフが刺さっていた。

 

「ひゃぁあああ!!痛い!!痛いよぉ!!」


 リリは刺された右腕を抑えて叫んだ。


「どうしてこんなことするの!?」


 泣き出すリリを見て、女の子はクスリと笑う。

 そして真紅のワンピースの真実を告げた。


「この赤いワンピースを作るにはね、いろんな材料を使うの。その中にね、血も入ってるんだ~♪それもたっくさん♪あなたが興味を持ってくれて良かった~♪」


 女の子はリリの右腕に刺さったカッターナイフを抜くと、今度は首筋に当てた。

 

「素敵なワンピースのために、リリちゃんの血、頂戴♪」




 その後、命の危険に瀕したリリは、暴れて女の子の家から逃げ出した。

 そして次の日から、女の子は学校に来なかった。

 リリはその一連の出来事を、誰にも話していない。


「まさか、また命の危機に陥るなんてな………」


 そう言って苦笑する。

 すると、下校を知らせるチャイムが鳴った。

 窓の外を見ると、雲が掛かっていることもあり、薄暗くなっていた。

 こんなことなら早く帰っていればと、今更後悔する。

 

「もうこんな時間だね。帰った方がいいよ。そうだ、アオちゃん寝てるから、起こしてくれない?僕はいろいろ片付けしてから帰るからさ」


「あ、あぁ………」


 テーブル席を見てみると、アオは机に突っ伏して眠っていた。

 背中に毛布が掛けられている。

 クロがやったのだろう。

 リリは近づき、アオの肩を揺らした。


「アオ、でいいんだよな?起きろ。帰る時間だぞ」


「う、うぅ………」


 アオは眠そうに顔を上げた。

 

「本読んでたら眠くなるよな…。ほら、帰ろ────」


 そこまで言いかけたところで、リリは言葉を失った。

 アオは涙を流していた。

赤いと言ったら血~♪

血~と言ったらあ・か・い♪

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