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八百万  作者: マー・TY
第七章
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81.不安な話

「アオ、……アオ!」


 昼休み。

 ボーッとしていたアオは、コユに呼ばれて我に帰った。


「あっ、……えっと、コユちゃん、何だっけ?」


「もう、アンタ大丈夫?なんかさぁ、今日ずっとそんな感じじゃない?」


「アオ~、大丈夫?」


「うん。ちょっとね」


 アオは現在コユ、ニコの2人と共に机をくっつけ、昼食を食べている。

 ふと、空いている席を見る。

 そこはシロの席だった。

 コユはそんな寂しそうにしているアオに微笑みかけた。


「シロのこと心配?大丈夫だって。あいつのことだからすぐに元気になって登校してくるわよ」


「うん、……そうだね」


 そう応えるものの、アオはどこか元気がなかった。

 友達として接していくうちに、アオにとってシロは特別な存在になっていた。

 シロは強く、体調を崩すところを見たことがない。

 だからこそ、アオはこの日シロが欠席したことに不安を感じていた。

 司波によれば、シロは現在入院しているのだという。

 敵が多いだけに、酷い目に遭わされたのではないかと、アオはとても心配していた。


『入院してるって聞いたよ。大丈夫?』


 午前中、シロにLINEでこのような連絡を入れたが、そこから連絡はない。


「アオから寂しいの感じる。よしよし」


「ありがとう、ニコちゃん」

 

 見かねたニコが、アオの頭を撫でた。

 そうしていると、アオのマナーモードにしているスマホが一度震動した。

 開いてみると、シロからのLINEの通知だった。


『なんとかな。今は隠神病院だ』


 シロからのメッセージを見て、アオの表情が緩む。

 反応が見られて一安心といったところだろう。


「アオ、何かあった?」


「うん。シロ君からだった。今は隠神病院にいるんだって」


「そっか~!良かったね!」


「うん。……お見舞い行ってもいいのかな?」


「いいんじゃない?押し掛けよ!」


 コユは悪戯っぽく笑う。

 アオは早速シロにメッセージを送った。


『放課後、みんなでお見舞いに行ってもいい?』


 このようなメッセージを送信して約一分後、シロから返事が返ってきた。


『いいぞ。丁度話したいことがある』


 シロからOKをもらい、アオは心の中で喜んだ。

 話したいことの内容が気になったが、それは放課後まで取っておくことにした。




「アオ、ここにシロがいるのか?」


「うん」


 放課後、アオはコユ、ニコに加え、カイとショウの4人と共に隠神病院を訪れていた。

 ちなみにトウも誘ったのだが、部活動のため付いて来なかった。

 受付で許可を貰い、アオ達は階段を上がってシロがいる304号室に到着した。

 扉を開けて入室すると、窓側のベッドに座るシロの姿を見つけた。


「シロ君……」


「よぉ、来たか。……って、カイ達も来たのかよ」


「お前が入院したって聞いてな!」


「まぁな……」


 シロは病人用の服を着ており、いつものトレードマークの白フードを被ってないだけで、アオは少し物足りなさを感じた。

 額や腕等に包帯が巻かれており、それが痛々しく見える。

 

「シロ君、怪我……大丈夫?」


「しばらく安静だとよ。まぁ、すぐ治るだろうよ」


 そんなことを言いつつ、シロは右手を軽く動かす。

 ここでコユが、疑問に思っていたことを聞いた。


「で、何があったの?アンタけっこう強いでしょ?なのにそんな怪我するなんて……」


「……あぁ、そのことについて話したかった」


「喧嘩?」


「……そんなとこだ。今から俺が話すことは冗談じゃねぇから、聞いてくれ」


 シロは昨晩のことを思い出しながら語りだした。

 人面犬とのやり取り。

 それからすぐに人面犬が怪人に殺されたこと。

 そこで勝負を挑んだが返り討ちにされ、逃げた矢先に捕まり、橋から川に投げ捨てられたこと。

 その後、岸に打ち上げられて倒れているところを見つかったと病院関係者から聞いたことまで、シロは真剣に話した。

 アオは深刻そうな表情を浮かべた。

 直接見たわけではないが、シロを負かす程の存在が隠神市に潜んでいるという事実に戦慄する。

 それとは裏腹に、カイは納得いかない様子だった。


「シロをやったのはどんな奴なんだ!?」


「2mくらいで図体もデカい。そんでもって黒ずくめで、顔がボロボロの化け物だ」


「よしっ!そいつぶっ飛ばして───」


「やめとけ。俺の攻撃が全く効かねぇ奴だぞ」


 今にも仇討ち行こうとするカイを、シロは宥める。


「そんなやべぇ奴なのかよ!?マジでやべぇって!逃げるしかないじゃんか!」

 

 巷で恐れられているシロでも歯が立たないことを知ったショウは仰天した。

 シロが落ち着かない様子の仲間達を宥め、話のまとめとして忠告をした。


「とにかく、その化け物がどういう奴かは見りゃ解る。出逢ったら全力で逃げろ。捕まったら間違いなく殺される。うちのクラスの……マリって言ったか……。そいつ殺したのも多分奴だ」


「うゆぅ……。ニコ、逃げられるかな?」


 少し運動が苦手なニコは弱気になる。

 コユはニコの肩に手を置いて、冷静に言った。


「司波先生が言ってたけど、これからは早めに帰った方がいいわね。できるだけ大人数で。ニコはトウが部活終わるまで待ってたら?」


「……うん!」


 コユに励まされ、ニコは少し元気を取り戻したようだ。

 窓の外を見たシロが、5人に告げた。


「もうこんな時間か。お前らもう帰れ」


「そうね。……みんな、帰るわよ」


「おう!」


「じゃあな!」


「シロ、また来るね!」


 コユ、カイ、ショウ、ニコの4人は軽く挨拶をし、入り口に向かった。


「あっ、そうだシロ君、これ」


「?」


 アオは鞄から、お菓子の名前やキャッチコピーが入った袋を取り出した。

 アソート仕様の商品で、中には味がバラバラのアメ玉がたくさん入っている。


「これ、お土産。アメ、好きだったよね?」 


「……ありがとな。大事に舐める」


 シロは笑ってアオに礼を言った。

 アオも控えめに帰りの挨拶をし、待っていたカイ達と一緒に病室から出た。

シロはアメ玉が好き。

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