表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八百万  作者: マー・TY
第七章
78/115

78.追われる話

「はぁ……。何で私だけ帰り道、みんなと違うんだろうなぁ」


 帰路を歩きながら、リリは溜息を吐いた。

 今日も真面目に授業を受け、剣道部として熱心に竹刀を振り、友人達と一緒に笑い合った。

 学校ではいつも通り明るく過ごせる。

 しかし最近、リリにとってこの帰宅中が憂鬱になっていた。

 

“ヒタ………ヒタ……………”


「!!」


 足音を聞いた瞬間、リリの体がビクリと反応した。

 本能が危険信号を放っている。

 背後に目をやると、数十メートル先に大男が近づいてくるのが解った。

 上下黒ずくめで、傷だらけで醜い顔、耳元まで裂けた口。

 “怪人”と呼ぶのに相応しい外見だ。


「…来たか………!」


 リリは舌打ちをし、駆けだした。

 それを合図にしたのか、背後の足音のテンポが早くなる。


(くっ!…走り出したか!)


 リリはスピードを上げた。

 彼女はこれまでに三度、正体不明の怪人に追われている。

 一番初めは1週間程前の部活帰り。

 いつものように帰宅していると、男性の叫び声を聞いた。

 正義感の強いリリは助けようと、声が聞こえた場所に駆け付けた。

 そこにいたのは、仰向けに倒れた20代くらいの男性と、現在リリを追っている怪人だった。

 男性の目は大きく見開かれ、ぐったりして動く様子もない。

 怪人は男性の口の右端の皮を摘まむと、上下に引いた。


“ブチブチブチブチ────────”


 口が右端から裂けていき、耳まで達した。

 くっきり見えた歯を、血が赤く染める。

 怪人はリリの方を見ると、ニタリと笑った。

 流石に恐怖を覚えたリリは、その場から逃げ出した。

 それに反応したかのように、怪人はリリの後を追った。

 捕まれば死。

 そう意識し、全力で走った。

 気付けば家に着いており、リリは胸を撫で下ろしたが、その日から怪物に目を付けられたのだろう。

 怪人に追われた日から、さらに二度も追われている。

 そしてついに今日、学校から一人死者が出た。

 首が折られ、腹が裂けたといった、無惨な姿で発見されたのだという。

 そんな芸当ができるのは、リリが目撃したあの怪人だけだろう。

 思った通り、捕まれば死が待っている。

 リリは、これからも怪人に追われることを想像した。

 誰かに相談しようにも、危険すぎるので巻き込むわけにはいかなかった。

 自分で何とかするしかない。

 リリはいつしか、そう思うようになった。




「ぐっ………!」


 リリは息を上げていた。

 部活終わりのせいなのか、リリは辛さを感じていた。

 それに、捕まれば“死”という緊張感からか、力を使いすぎてしまっている。

 そして一つ、違和感を覚えた。

 

(気のせいか?……なんだか足音が大きくなってるような………)


 走りながらリリは、背後の様子を伺った。

 怪人は少しずつだが、リリとの距離を縮めてきていた。

 

(ヤバい!)


 ただでさえ早まっていた心臓の音が、ますます早くなる。

 このままでは殺される。

 ふと目線の端に曲がり角を見つけたリリは、そこへ駆け込んだ。

 残った体力で、細かな道を走って怪人を錯乱させる。

 そして入った道から脱出し、すぐに家の方向に駆けだした。

 家に到着し、玄関のドアを開け、バタンと閉める。

 

「はぁ………はぁ…………」


 家に着いたことへの安心感から緊張の糸が切れ、リリは玄関のドアを背に座り込んだ。

 

「おかえり~。…って、ちょっとリリ!!そんなとこに座ってどうしたの!?」


 玄関の音を聞いた母親が、リリを心配する。

 そんな母親に、リリは笑いかけた。


「いや~……。体力付けるために帰り道は走ることにしたんだよな。体力ある方が何かと有利だろ?」


「もう、相変わらず頑張るわねぇ。汗だくじゃないの。お風呂沸いてるから入って来なさい」


「は~い!」


 リリは立ち上がり、自分の部屋に向かった。

 荷物を置き、部屋着を持って風呂場に向かった。

 体を洗い、浴槽に浸かったところで、リリは帰宅中のことを思い返した。

 

「また追われた………」


 四度目。

 リリは今日、四度目の怪人からの襲撃から逃げ切った。

 命を守り切ったものの、それでもリリは安心できずにいた。

 きっとまた襲われる。

 その上、いつ終わるかも解らない。

 そんな状況下に、リリは絶望感を抱いていた。


「やっぱ、あいつを何とかしないとダメなのか……?でも、あれは……」

 

 怪人の体格はリリの3倍以上。

 得意の剣道を駆使しても、リリには怪人を倒せる自信が無かった。

 

「………ていうかあいつ、速くなってる……よな?」


 リリは感覚的に感じていた。

 怪人の足は、リリが初めて追いかけられた日よりも、少しずつだが速くなってる。

 怪人の足の速さ、そして持久力は、人を追っている間に着実に成長しているようだ。

 今はなんとか逃げ切れている。

 しかしこれは、いずれリリが捕まることを意味していた。


「あいつが私より速くなった時、…私は、……殺されるのか……」


 リリは天井を見上げた。

 怪人に捕まり、殺されるのは時間の問題。

 自分はいったい、何回目で死ぬのだろう。


「殺されるってなったら、痛いのは嫌だな……。でも、あいつに捕まったら、……バラバラか?」


 温かい湯船に浸かっているにも関わらず、リリの体に悪寒が走る。

 歯がガチガチと鳴り出す。

 

「嫌だ……まだ死にたくない……」


 温かいはずの風呂場で、リリはひとり、徐々に迫る死の恐怖に震えていた。

キャラ紹介



リリ

本名 風谷凛々

性別 女

学年 高1

誕生日 11月11日

趣味 運動

好物 白米


男口調だが女子。

気さくで面倒見が良い姉御肌。

剣道は中学からやっている。

何故かリリのファンになる女子が多い。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ