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八百万  作者: マー・TY
第六章
73/115

73.揺れの話

「カイ君、僕のも頼む……!」


「任せろ!」


 すっかり自由の身になったカイは、倉田の拘束を解きに掛かった。

 固く結ばれていたため面倒くさくなったのか、カイは途中から無理矢理縄を引き千切っていた。

 その馬鹿力に倉田は驚かされる。

 拘束が解けるのに時間は掛からなかった。


「ホントに凄い力だな。君は」


「早く行こうぜ!コユを助けねぇと!」


「うん!…でも、どうやらそう簡単にはいかないようだ」


 廊下の方から足音が聞こえてきた。

 先程のカイの暴れっぷりが響いたのだろう。

 2人がいる部屋に巫女達が駆け込んできた。

 ざっと数えて10人以上はいる。

 全員が杖術の棒を持っていた。


「騒ぎすぎたのかも。どうしても僕達をここから出したくないらしい」


「邪魔すんなお前ら!!!」


 カイは先に倒した巫女の棒を拾い直すと、巫女達に向かっていった。

 数で圧倒しているのにも関わらず、巫女達はカイ一人にどんどん押されていく。

 カイは一人一人を棒で殴って沈めていった。


「アクション映画みたいだな……。そうだ、この隙に!」


 倉田は巫女達の注意がカイに向けられているのを見計らい、客室から脱出した。

 公民館内の廊下を走り、手当たり次第に部屋を開けていく。

 そして一つの部屋を開けた際に、自身とカイの荷物を発見した。

 調べてみると、幸いなことに倉田の携帯とカイのスマホは壊されていなかった。


「良かった。……そうだ、カイ君の強さは認めるけど、熊田さん達からコユちゃんを取り戻すには骨が折れそうだな。何か使える物は………」


 倉田は近くにあった引き出しを開けてみた。

 

「おっ、……これは使えるかもな」


 倉田は引き出しに入っていた物を見て、ニヤリと笑った。




(………ここは)


 目を覚ましたコユが最初に見た景色は、薄茶色の布でできた狭い世界だった。

 ユラユラと体が揺れる。

 口も手足も塞がれていて、身動きが取れない状態だった。


(これ、デッカい袋?あたし袋に入れられて運ばれてるの?あのおっさん達に?)


 コユは熊田の姿を思い出した。

 そして腹を立て、袋の中で暴れてみせる。


「起きたのか?大人しくしていろ」


 熊田の声が聞こえてきた。

 コユを袋に入れて運んでいるのは熊田自身らしい。

 

(全然ビクともしない!ていうか動きづらい!)


 コユはそれでも抵抗を続けるが、やはり思うようにはいかない。

 手足が動かせない状態では、身をよじることしかできないようだ。

 

(生贄とか嫌だ!このままこんな知らない町でカイ達とお別れなんてごめんよ!このっ!出してよ!)


 コユが暴れても何も変わることがなく、熊田達一行は山中にある廃神社を目指す。

 メンバーは熊田の他に、住職と巫女が2人。

 それぞれが少し辛そうな顔をしている。

 このまま生贄になるのを待つしかないのでは?

 コユがそう思ってしまったその時、突然大きな揺れが熊田達を襲った。

 その際にバランスを崩した熊田の手から、コユが入った袋が落ちた。


(痛っ!)


 地面に体を打ちつけたコユは、そのまま山道を転がり落ちていく。


「しまった!」


「この揺れは何だ!?ダラがお怒りか!?」


 熊田達は地面に爪を食い込ませ、落ちないように掴まる。

 その間もコユが入った袋は転がり続ける。

 そして途中生えていた木に引っ掛かって止まった。


(痛い……何この揺れ?地震?)


 木を通して震動が伝わってくる。

 コユはそれに耐えるしかなかった。




 揺れは神社の公民館にまで伝わっていた。

 

「うわっ!何だ!?」


 カイはしゃがんでバランスを取った。

 山ほどではないにしろ、それでも立っているのは難しいらしい。

 

「カイ君!」


 足元が覚束ない中、倉田が客室に戻ってきた。

 手に荷物を持っており、カイの前にしゃがむ。


「倉田さん、この揺れ何だ!?」


「ダラが関係してるのかも。今は耐えよう。この様子じゃあっちも足止め食らってる筈だ」


 倉田は山道で動けなくなっている熊田達の姿を想像した。

 揺れはその後10分程続き、次第に弱まっていった。

 完全に治まったのを確認すると、2人はゆっくりと立ち上がった。


「揺れが無くなったな」


「そうだね。はい、これカイ君の荷物だよ」


「おっ!サンキュー!」


 カイは倉田から荷物を受け取った。

 するとそのタイミングで、スマホから着信音が鳴った。

 カイは通話に出た。


「もしもし?」


『もしもし、カイか!やっと電話に出たな!』


「父ちゃん!?」


 電話はガレンからだった。

 倉田は目をパチクリさせている。


『俺は今アオと一緒に雑木林にいる。そこで次元の歪みを見つけた』


「次元の?何だそれ?」


『つまりお前達がこっちに帰れるための入り口を見つけたってわけだ。ただちょっと邪魔されてるようだが……。お前の方はどうしてるんだ?』


「俺は今倉田さんと公民館に……、いや、そんなことよりコユが危ねぇんだ!このままだと生贄にされちまう!」


『生贄!?どういうことだ!?』


「えっと、何かダラって奴が暴れてるっぽくて!」


『ダラ?……あそこの社といい、まさかこの手、“かんかんだら”のものか!?』


「手って何の話だよ!」


「カイ君、ちょっと代わってくれないかな?」


 ここで倉田がカイにそう申し出た。

 カイは頷いて倉田にスマホを渡した。


「もしもし…」


『ん?アンタ誰だ?』


「倉田と言います。俺は今カイ君と協力関係にあります。少し情報を共有したいんですが、いいですか?……カイ君、急ごう!着いてきてくれ!」


「あぁ!」


 カイと倉田は公民館から出た。

 倉田は走りながら、ガレンと情報の共有を始めた。

 それからお互いが置かれた状況を、それぞれ理解した。


「ダラは今、片方の手が切れてる状態なんですね?なら少しは弱っているはず。何とかできるか……」


『あぁ。……今を逃せば次元の歪みが次いつ出現するか解らない。消える前にカイ達をこっちに戻してぇんだ』


「しかし今開けば、ダラがそっちに行ってしまうかもしれない……と。解りました!こっちで何とかしてみます!」


『あぁ!頼む!』


「はい!それじゃあ切ります!」


 倉田は通話を切り、カイにスマホを返した。


「カイ君、ガレンさんは君達が帰るための入り口を見つけたみたいなんだけど、それをダラに邪魔されてるらしい!」


「マジか!」


「あぁ!だからこっちでダラを何とかしよう!ダラは今負傷している状態だ!コユちゃんも無事で済むかもしれない!」


「解った!」


 2人は夢中になって駆けていく。

 そして、ついにダラが待つ山に入っていった。

一種の生き物として見れる怪異も存在するんですかね……。

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