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八百万  作者: マー・TY
第六章
71/115

71.狭間の話

 再び場面は切り替わり、“S区”内。

 カイと倉田は、急ぎ足で階段を登っていた。


「もうすぐ目的地だ!コユちゃんはきっとこの先にいる!」


「あぁ!」


 2人はあっという間に階段を登り終える。

 そこは神社だった。

 赤い鳥居から続く、石畳の道。

 その先には、立派な社が建っている。

 

「神社?」


「こっちだ」


 倉田は鳥居をくぐり、社ではなく、その横にある建物に向かった。

 カイも後に続いた。

 その建物の入り口の上に、『公民館』と書かれた木製のプレートが貼られていた。

 “S区”の公民館は、神社の中にあるらしい。


「すみません」


 倉田は戸を叩いた。

 するとしばらくしてから戸が開き、中から大柄の男性が出てきた。


「む?倉田君か」


「熊田さん、ちょっとお尋ねしたいことがありまして」


 熊田は、倉田の後ろに立つカイを凝視した。

 

「見ない顔だな」


「はい。今日は彼のことで。彼はこの町の外から来ました。その時は一緒に女の子がいたそうなんですが、行方不明になったようで。心当たりはありませんか?」


 前髪で隠れた倉田の目が熊田を射貫く。

 熊田の表情は変わらない。


「さぁ?知らないなぁ」


 熊田は目を逸らして応えた。

 しかし倉田は引き下がらない。


「いや。俺はこの神社の巫女が、少女を運んでるのを目撃した。アンタも一緒にいたよな?知らないなんて言わせないぞ」


「!!…おっさんがコユを攫った犯人か!!」


 カイが倉田と熊田の間に割って入った。

 

「コユをどこにやったんだよ!!」


「………隠し通せそうにないな」


 そう言って熊田は溜息を吐いた。

 かと思うと、突然目を見開き、自信の拳をカイの顔面に叩きつけた。


「ぐあっ!!」


 カイは倉田の背後まで転がった。

 なんとか踏み留まると、カイは鼻を抑えて身を起こした。

 血が石畳の道に零れる。

 

「熊田さん!何を!?」


「仕方ないことなんだよ倉田君。全てはこの町のためなんだ。ダラを、鎮めなければならない!!」


 熊田は倉田の顔面に拳を振り下ろした。

 倉田は地面に崩れ落ちた。


「倉田さん!!……がっ!?」


 カイの後頭部に衝撃が走った。

 カイの後ろには、丈術用の棒を持った巫女が立っていた。

 2人はいつの間にか、複数の巫女達に囲まれていた。

 カイは顔から道に倒れた。


「手足を縛って部屋に閉じ込めておけ」


 熊田がそう指示をすると、巫女達は動き出した。

 それぞれが縄を持ち、カイと倉田を縛りに掛かる。


「おや、これは……」


 公民館の中から眼鏡を掛けた、坊主頭の男性が出てきた。

 彼はこの神社の住職だ。

 公民館の外での光景に、茫然としている。


「住職、彼らは我々を邪魔する者達だ。安心しろ。大人しくさせた」


「し、しかしこのようなことを……」


「この町を救うためだ。この町の住民を救うためなら、私は鬼にも悪魔にもなろう。……おい、そこの2人」


 熊田は2人の巫女を呼んだ。

 そしてその2人が自身の元に来ると、住職にも聞こえるようにこう告げた。


「出発するぞ。ダラを鎮めるためにな」




 雑木林の前では、ガレンに自身が識ったことを話したアオが、スマホに耳を当てていた。

 “プルルルルルル”と、何度も繰り返し鳴る。

 そしてそれが終わると、今日何度目かの女性のアナウンスが聞こえてきた。

 『現在、通話に出られません』と。


「ダメだ。カイもコユちゃんも出ない」


 アオは俯き、スマホをバックに仕舞った。

 ガレンは機械を動かしながら、横目でアオを見ていた。


「繋がらないか?」


「うん」


「マズいかもな。早くしねぇと」


 ガレンは再び機械に目を移した。


「パパは、何してるの?」


「次元の歪みを探してるんだ」


「次元の……歪み………?」


「あぁ。そしてこれが、次元の歪みを感知する機械だ」


 ガレンはストップウォッチのような機械をアオに見せた。

 そして話を続ける。

 

「この世にはな、平行世界ってのがあるんだ。俺達がいるのとは少し違うような世界がいくつか存在する。本来別世界同士繋がることはねぇんだが、次元の狭間が開いちまったことで、カイとコユはそこから別世界に迷いこんだわけだ。“裏S区”がある世界に」


「“裏S区”?」


「お前の話から解ったよ。“裏S区”ってのは霊の通り道になってる町のことだ。ネットで掲載された怪異がここ隠神市で実体化するパターンは何度かあったが、まさか別世界に存在するとはな」


「……町全体が怪異ってこと?」


「あぁ。この世界のS区はとっくの昔に無くなってんだ。2人が迷った世界にはまだ実在してるわけだ……おっ?」


 ガレンは手に持った機械に注目した。


「見つけたぞ。この林の中だ」


「えっ……」


 ガレンは雑木林を指差した。

 アオ達がいる場所は明るいが、雑木林内は暗い。

 ガレンは車に戻ると、すぐそこに置いてあった大きめの機材を背負った。


「俺一人で行く。アオは先に帰ってろ」


「えっ?大丈夫なの?」


「俺は何度もこういうの経験してんだ。心配すんなよ。すぐに2人共連れて帰ってくるからよ」


 そう言ってガレンは、アオの頭を優しく撫でた。

 そして雑木林に歩き出す。

 

「パパ………」


 アオは普段、両親の言うことは素直に聞くタイプだ。

 しかし、今のアオは素直にガレンの言うことを聞けなかった。


「待って!」


 アオはガレンの横に追いついた。


「どうした?アオ」


「私も連れて行って!何の役にも立たないかもしれないけど、それでもサポートさせて!」


 ガレンは一瞬ポカンとしていたが、その後笑い出した。


「ははは!」


「ど、どうしたの?」


「いやぁ、お前、本当に大きくなったなぁ。そうかそうか。それじゃあアオ、次元の歪み探知機使ってみるか?」


「ど、どうやるの?」


「歩きながら説明する。お前ならすぐ覚えるかもな」


 朗らかに笑うガレンと、少し戸惑うアオ。

 2人は一緒に雑木林に入っていった。

カイとコユってある意味異世界転移してますよね。

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